(5)


 全ての試験を終え、あっという間に本命の大学の合格発表の日になった。心臓がバクバクと音を立て、指先が震える。大丈夫、できる限りの努力はしてきたはずだ。


 神様どうかお願いします……。心の中でそう唱え、合否結果のwebページにアクセスすると、そこには舞い散る桜の画像と共に[合格]の二文字が映し出されていた。


「やったあぁ……」


 あまりの喜びと達成感に、全身の力が抜けた。暫く呆然としていたが、急いで伊原の家に電話を掛けた。今日は日曜日だから、バイトか、もしかしたらまだ寝ているかもしれない。3コールして、出なかったら諦めよう。



「もしもし」

「うわあ! びっくりした……」


 そう思った矢先、1コールも鳴り終えないうちに応答され、口から心臓が飛び出そうになった。


「ごめん。今日合格発表の日だって聞いてたから、待機してた」

「そこまでしなくていいのに……。でも、ありがとう」


 変わらない優しさに、胸がじんわりと温かくなる。



「えっとね、合格してたよ」

「マジか! おめでとう。すごいな、頑張ってたもんな」


 伊原は心の底から安心したような声で祝福してくれた。しかし、私はその時すでに、他のことで頭がいっぱいだった。



「卒業式の後、空いてる? 話したいことがあるんだ」


 大学に合格できたら、伊原に告白する。そう決めていた。ただの友達としか見られていないかもしれない。私が伊原にしたことを考えると、むしろ友達と思ってもらえるだけでも感謝しなければならない。玉砕しても、しょうがない。


 だけど、この想いを秘めたまま卒業だけはしたくなかった。私がどれだけ彼に救われて、彼を好きか、ちゃんと目を見て伝えたかった。



「分かった」

「ありがとう。みんなが帰ったらそっちのクラスに行くから、待ってて」

 

 そう言い残し、電話を切った。

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