(8)
私が、伊原を助けないと……。
なんとか自分を奮い立たせ、ガクガクと震える足で階段へと向かった。一番下の階まで辿り着いたところで、廊下を歩く先生の姿が目に入った。
「た、たす……助けてください!」
声を振り絞ると、先生はすぐこちらに気付いてくれた。事情を説明しながら、一緒に階段を駆け上がった。
✳︎✳︎✳︎
「お前ら何やってる!」
「やばっ! タナ先来た!」
先生の姿を確認するや否や、取り巻きは慌てた様子で教室から逃げ出した。相模は舌打ちをしながら机を蹴り付け、そこから立ち去った。
多香子と遥の姿は、すでに見当たらなかった。
教室の床にぐったりと横たわる伊原のもとへ駆け寄り、強く抱き締めた。息は乱れ、瞼と頬は赤紫に腫れ上がり、辺りに血が飛び散っている。
「い、伊原……しっかりして。死なないで……」
「これくらいで、死なないよ……」
伊原は笑顔を作ろうとした。私を安心させるためだろう。その痛々しい姿に、涙が止まらなかった。
「おい大丈夫か! とりあえず保健室まで運ぶぞ」
先生が駆け寄ってきて、伊原を軽々と背負った。
「すみません……。彼女は関係ないんです」
「もう喋るな。話はさっきの奴らに聞く」
先生は落ち着いた声で伊原に言い聞かせた後、「保健室まで付いてきてくれるか?」と私に言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます