(6)
放課後、体育館裏の掃除を終え、教室に戻ろうとした時だった。
「てかあの女さ〜、地味に巨乳だったよな?」
「確かに! 大人しそうな顔して、実はめっちゃエロいんじゃね?」
教室の中から数名の男子の声が聞こえてきて、思わず物陰に身を隠した。
「多香子の言うこと聞くならさー、俺の言うことも聞くでしょ」
「俺らも動画撮影したいな〜」
これ、私のことだ。心臓がバクバクと音を立て、冷や汗が頬を伝うのが分かった。一番大きな男の声には聞き覚えがあった。恐らく、以前多香子を訪ねてきた、相模という先輩だろう。
「ねぇ多香子、先輩達と一緒に、もう一回新しいゲームしようよぉ」
遥の猫撫で声が聞こえてきた。どうやら教室内には多香子、遥、相模と数人の先輩がいるようだ。
「ゲームの契約期間は3ヶ月って決めてたでしょ。ななはそれを約束通りこなしたから、もう終わりだよ」
「おい、ゲームって何のこと?」
私は耳を疑った。さっきまでいなかったはずの伊原の声が突然聞こえてきたからだ。恐らく、掃除を終え、反対側の扉から教室に入ったのだろう。
「全部お前の仕業か?」
「レイプ魔が何の用でちゅか〜?」
普段は感情を露わにしない伊原の声が、静かな怒りに満ちているのが分かった。それを相模が揶揄し、取り巻きが下品に笑う。
「木津、お前が動画撮るように脅して、それを広めたのかって聞いてるんだよ」
「動画を撮るよう要求したのはあたし。ななは条件付きでそれを飲んだ」
「条件って?」
「それは言えない」
ーー約束は守るよ。友達じゃん。
夏休みのあの夜の、多香子の言葉を思い出した。彼女は、嘘をついていなかった……。
突如、遥のけたたましい笑い声が響き渡った。
「なんであんな奴庇うの? マジでつまんない。
伊原ぁ、ホントのこと教えてあげるよ。なながアンタに友達になろって言ったの、嘘だから。多香子が考えた暇つぶしのゲーム。どう? 傷ついた?」
一気に全身の血の気が引いていくのがわかった。伊原に全てバレてしまった。終わりだ。何のためにあんな思いまでして、動画を撮影したんだろう。
こんな形で伊原が真実を知ることになるのなら、私の口から話せば良かった。後悔の念がどっと押し寄せる。
「バカ……」
心底呆れたような多香子の声が聞こえた。
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