(3)


「なんだ、そのこと? みんなに送ったら面白そうだなと思って、シェアしといた!」



 疑問に答えるように、遥が眩い笑顔でそう言い放った。愕然とする私たちに構うことなく、彼女はご機嫌な様子で喋り続ける。


「ななが教室入ってきた時のみんなの反応、どうだった? あー! 朝練無かったら見れたのになあ」



 そんな、まさか。

 どうして遥が? ゲームの発案者である多香子が考え付くなら分かる。娯楽と刺激のためなら、人を傷付けることも厭わないと思っていた。だけど遥は、何のメリットがあってそんなことをするの?


 ショックだった。グループの中で、一番話しやすいのは遥だった。対等に扱われていないと感じることはあったが、それでも、こんな風に裏切られるとは思っていなかった。



「何てことしたの……」


 若葉が溜息を吐き、多香子も呆れた様子で遥を見つめる。当の本人は何が悪いのか分からないといった様子で、目をキョロキョロさせている。



「え、何で喜んでくれないの……? 多香子こういうの好きだよね? ハル、間違ってないよね?」


 へつらう遥に対し、多香子は心底失望した様子で「もういいよ」と宣った。



「もういいってどういうこと!? ね、ハルのこと嫌いになったとかじゃないよね? 嫌だ、ななみたいになりたくない!」


 遥の言葉は、鋭利なナイフのようだった。心がズタズタになっていく。あまりの衝撃に何も言い返せない自分が悔しくて、涙が溢れ落ちないようにするのに必死だった。



「ごめん……こんなつもりじゃ無かった」


 泣きべそをかきながらすがりつく遥を鬱陶しそうに退かしながら、多香子が私に言った。


 言葉が出ない。多香子が謝るなんて、思ってなかった。遥がこんな暴挙に出るなんて、思ってもなかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る