(2)
自席に着き、鞄を下ろした時だった。ほとんど話したことがない3人組が声を掛けてきた。
「大丈夫……? 酷い目に遭ったね」
「伊原ならいつか何かしでかすと思ってたけどね」
頭が真っ白になった。思考が追い付かない。彼女たちは、一体何の話をしているんだろう。
いや……本当はどこかで分かっていたはずだ。多香子がせっかく見つけたおもちゃを簡単に手放すわけがないってこと。
私はクラスメイトを押し退け、一目散に多香子の席へと向かった。
「多香子! 約束が違う!!」
若葉と話しているところにそう怒鳴り付けると、彼女は少し気まずそうな顔をこちらに向けた。
「例の動画のこと?」
「それ以外に何があるの!?」
怒号が響き渡り、教室が一瞬、しんと静まり返る。脳がジリジリと焼けるようだった。怒りと興奮で、手が震える。
コイツが約束を破ったんだ。やっぱりこんな奴、信用すべきじゃなかった。
「それ、あたしじゃない」
激昂する私にたじろぐ様子も無く、多香子は平坦な声で言い放った。その白々しさに心底腹が立ち、反射的に彼女の胸ぐらに掴み掛かろうとした、その瞬間だった。
「何してんの!?」
遅れて教室に入ってきた遥に腕を掴まれた。無理やり離そうとしても、びくともしない。
「もしかして……遥なの?」
若葉が訝しげに尋ねた。
「どういうこと?」
キョトンとしている遥に代わって、私は聞き返した。
「実はあの動画、若葉と遥だけに送ったの。万が一、伊原にゲームのことがバレたときに、身を守る術が必要だと思って……」
多香子が静かにそう言った。意味が分からない。じゃあ、どうして、クラス中に動画が広まっているの?
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