5. 暴発
(1)
翌日、スマホの電源を点けると、多香子からただ一言[おつかれ]とメッセージが届いていた。
これで、本当に終わりなんだ。
伊原に嘘の告白をし、動画を撮影したことへの罪悪感はあった。しかし、これ以上多香子の言いなりにならなくて済むと思うと、ほっとした。
伊原へ罰ゲームのことを伝えずに済む。昨日の行為を謝りさえすれば、いずれ元の関係に戻れるだろう。それから、いつか本当の私の言葉で、想いを伝えればいい。
夏休み最後の土日はあっという間に過ぎ、新学期になった。
神堂からのメッセージを無視していることに、謝る必要があると思った。応援してくれた彼に嘘をつき続けるのは気が引けるが、事情は伝えられない。伊原にフラれたショックで、返事ができなかったことにしよう。
そう考え、朝一番に彼のクラスへと赴いたが、どうやらまだ来ていないらしい。元々、時間通りに登校することの方が珍しい人だ。しょうがない。後でメッセージを入れておこう。
そう思いながら、足早に自分のクラスに向かうと、教室から聞こえる声がいつもより騒々しいことに気付いた。胸騒ぎを覚えたが、それを掻き消すように、勢いよく扉を開けた。
クラスメイトの視線が、一斉に私を突き刺す。一瞬、時間が止まったような気がした。しかし、誰かの雑談を皮切りに、すぐに元の騒々しさを取り戻した。
普段は注目されることなどない自分に向けられた、好奇心に満ちた数多の目。嫌な予感がした。伊原に目をやると、相変わらずイヤホンを付けたまま、机に突っ伏している。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます