第6話――チャーミンの処遇【前編】
いくら気に病まないよう宥めても、オンヌは固い表情を崩さなかった。元々強面だから恐いんだけどな……
そんなこんなで俺たちは、ダンナの待つ食堂へ到着する。クリオラさんに扉を開けてもらい、緊張しつつもしゃなりしゃなりと足を踏み入れる。
「お待たせいたしました」
「ふん」
……って、それだけかい! 遅れたのは悪かったけど、呼びつけておいて返事もしないのは感じ悪いぞ。あと俺だって出来れば早く来たかったわ。女の支度ってえらい時間かかんのな。
アメトリンと俺の席はかなり離されていて、いかにも貴族の食卓っぽい。一応病み上がりらしい俺には柔らかいパンとスープだけだが、記憶が戻ってからは初めての食事だったのでがっついてしまい、使用人に呆れた視線を寄越されてしまった。
「短期間でよくもそこまで回復できたものだな。媚薬と言っても所詮は君の戯れで作られた代物か」
いやいや、グリンドが解毒してくれなきゃ、下手すりゃ廃人になってましたから。つーかこいつ、いくら嫌いな相手だからって結婚初日から殺しにかかるとか性急過ぎだろ。まあ、ブツは俺の自作だから事故は装えそうだけど……
「ご心配おかけいたしました。全ては竜神の御意思の下……」
「君のような者を生かしておくのが神の意思なら、我が国に神殿は不要だな」
心底バカにしたように鼻で笑われたが、おーい? 本人聞いてるんですけど。ついでに王子の婚約者さんの家も、隣国の竜神信仰の権威じゃなかったっけ?
「まあそんな事はどうでもいい。君の今後について正式に決めておきたい」
「……と言いますと?」
もしかしなくとも、夫婦生活のアレやコレだよな。お飾りとは言え、王侯貴族の結婚には愛などなくとも跡取りを残す義務は発生する。うわー、やだな……今の体こそ女だが、中身はおっさんだから心情的にBLになっちゃうんだけど。いくらイケメンでも男はノーサンキューだぞ、むしろ滅びろ。
「初夜でも言ったが、私は君を愛する気は一切ない。よって白い結婚のまま、君とは二年後に離縁させてもらう」
「……えっ?」
白い結婚ってつまり、夫婦の義務は果たさなくていいって事? そりゃありがたいけど!
「離婚は今すぐでなくともよろしいのですか?」
「忘れているようだな。君はプリッカ様を陥れようとした。式の直後に破断ともなれば、その件に関しての罪も改めて問われる事になるが?」
前世の俺なら違和感を感じないが、婚約者さんへの呼び方が若干馴れ馴れしい気がする。少し前までは『グリンカ辺境伯令嬢』だったのにな。まあ長いから言いにくそうだったし、めでたく王子と婚約できたんだからそうなったんだろう。
しかしなるほど、この結婚は恩情ってわけね。俺としては男と××しなくて済むなら何でもいい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます