エピローグ

 アンが落ち着きを取り戻し、もう片方のカラコンを外した後、ネコがやわたんを引きずる様に連れて来た。

 やわたんのその顔は、何回も殴られたかのように腫れており、目の周りにも痣が出来ていた。

 その姿を見て、アンとヒロは絶句した。

 そして、ネコがやわたんをアンの前に土下座させる。

「ごめんねアン。さっきはひどい事を言ったけど、許して欲しいの。よくよく考えたら、アンの方からやわたんにキスするなんてどう考えてもおかしいし、問いただしたら案の定コイツが悪かった。だから、その。仲直りしてくれる? やっぱ、怒ってるよね……」

 ネコは頭を下げた後、バツが悪そうに顔だけをあげた。

 もちろん、アンの回答は決まってる。

「怒ってなんかないよ。私もネコちゃんとはこれからもずっと仲良くしていたいから大丈夫」

「あぁ~~、良かった~~。さっきは私から言ったけど、本当に絶交されたらどうしようかと思った~」

「ふふ、ネコちゃんだ~い好き」

 アンはネコに抱きつき、スリスリと頬を寄せた。

「んもぅ、くすぐったいよぉ」

「あのね、今まで私のなりきりに付き合ってくれてありがとう。そして、沢山迷惑かけてごめんね?」

 アンのその発言にネコは目を丸くした。

「え? 気付いたの? カラコン入れていないと思ったら……」

「うん。ヒロ君が気付かせてくれたの。入れ替わりなんて無いんだって。そう思うと、なんだか恥ずかしくなってきちゃった」

 アンはさらにギュッとネコを抱きしめた。

「よしよし。偉いねアンは」

 ネコに頭を撫でられ、アンはうっとりとした表情になった。

「それと、ありがとねヒロ。アンに自分と向き合う機会を与えてくれて」

「なに、俺は当然の事をしたまでだ」

 ヒロは真顔でネコにそう返答すると、いまだ土下座をしているやわたんをチラリと見た。

「一つ相談なんだが。俺もこいつを殴って良いか? 人の彼女に勝手にキスをしたんだ。それぐらいさせてもらいたいんだが」

「う~~ん、どしよっかな~~」

「お、おいネコ。嘘だろ? お前のパンチならまだしも、ヒロのなんて喰らったら俺死んじまうよぉ」

「やっぱり、まだ反省していないみたいだし、やっちゃっていいよ。でも手加減はしてね?」

 ネコの答えは無慈悲だった。

「あぁ、ありがとう」

「わ、わわ! ちょっとタンマ!」

 ヒロが一歩近づくとやわたんは後ずさった。

「一発だけで勘弁してやるから、ほら、立て」

 ヒロが強引にやわたんの腕を引っ張り、むりやりに立たせる。

 そして、ヒロはあげた腕を勢いよく振り下ろした。

 ネコの感触を堪能していたアンの耳には、パァンという平手打ちの音だけが聞こえた。

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アンメタモルフォーゼ 玄門 直磨 @kuroto_naoma

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