第18回 賽の結果は……
『
始まってしまえば例えミッシェルを攻撃しようと結果は出る。
既に賽は投げられているのだから。
……万が一ミッシェルが死ねば止まるだろうがその可能性は考えなくてもいいだろう。
「
「そのまま待機でいいよ。多分だけど……」
結果は彼女の頭上に光で現れる。
「彼女の賽は失敗する」
出た目は……。
「……『
出た目は2、5、8、10、12。
彼女の言うとおり、ゴミ同然の一切重ならない数字達だった。
その瞬間、ミッシェルの銃が纏っていた魔力刃が解除され、周囲の熱気が最初から無かったかのように消え去った。
「ん?何事?」
「時間の無駄だ。今日はこれで退くとしよう」
「はぁー?なんでそんな急に」
と、言ったシルキーだがミッシェルが左手を突き出した時には私の傍に来ていた。
さっきのミスを覚えていたのかカバーしに来たのだろう。
だがミッシェルは魔力で自らの杖を引き寄せ、回収しただけだった。
「貴様が加入するなら多少は戦力が上がっただろう。今日はそれで満足してやる」
「ハッ!私は今日ここで雌雄を決しても良かったんだけどねー?」
「……舐めるなよ。私の『特典品』を知らないわけではないだろう?」
「それでも私が勝つ。
今回の戦い、実を言うとミッシェルは一つも『特典品』を使わず、シルキーは二つ使っていた。
一つは隠密用の影潜り能力が付いたペンダント。
旧ガルニ神殿40階層ボスである『リバーサル・ブライトウルフ』の『特典品』
『
もう一つはあの大太刀の素材。
旧メテオラ修道院80階層ボスである『クロノ・マキア』の『特典品』
『
これを素材にしたことによってシルキーは膨大な魔力を大太刀に注ぐことで自然に存在するほぼ全ての属性を操ることが出来る。
『
加えてシルキーは『親愛の鐘』を使用。
『
ミッシェルは武器こそ全て本気の物を持ち込んでいたが『特典品』は無使用、『親愛の鐘』も最後まで使わず互角に見える戦いをしていた。
シルキーもまだあと一つ『特典品』を所有しているらしい。
だがそれだけで本気のミッシェルに勝てるとは思えない。
彼女は五つの『特典品』を保有しているのだから。
そしてそのうちの一つは『道化師』の物、そしてこれが『異物の道化師』の強さを磐石な物にするとんでもない装備だ。
その名も『
彼女の行動の中で運が介入する要素をある程度望む通りの結果にする金の腕輪だ。
私はこれをミッシェルが装備していないことに気づいていた。
『道化師』を常用するベルレイバーが少ない……真剣に戦ってる奴等の中では恐らくミッシェルしかいないのはこの扱いづらさにある。
重要な局面で13面のダイスを4回振って数字を重ねられる豪運を持つ者などそもそもベルレイバーをやっていない。
戦いの場に身を投じなくていい、宝くじでも買え。
つまり、『特典品』さえなければミッシェルは多彩さがウリではあるもののベルレイバーの心臓である『親愛の鐘』が使えない欠陥者だ。
魔力欠乏者が1位、博打打ちの器用貧乏が2位。
これが事実でこれが何年も動かない3位以下との隔絶された差がある2人の正体だ。
「無駄骨ご苦労様、次会うときはギルドバトルがいいなぁ」
「……フン、精々夜道には気を付けることだ。私は貴様を認めたわけではない」
彼女はそのままエッフェル塔から飛び降りた。
恐らく着地直前に魔法で勢いを殺すのだろう。
「……ぶっはぁ!!緊張したぁー!」
「お疲れさま。よく頑張ってくれたよ」
ずっと張り詰めていた空気が弛緩し、倒れこむシルキー。
先程までの啖呵は虚勢でもあり、本音でもあったのだろう。
「いやぁ、初仕事にしては重すぎ……ハッ!でもでも、」
「ん?」
仰向けになっていたのが直ぐ様うつ伏せになり、私の足元に這い寄るシルキー。
……巨大な蜘蛛みたいでちょっとゾワゾワした、足が出そうになったけど堪えれてよかった。
「合格ですよね?
「……あぁ、それなら」
なーんだ、そんな事全くもって気にする必要なかったのに。
「文句無し。欠員補充の件についてはシルキーに頼むよ」
「やったぁぁぁ!!!」
「ちょっ、うるさいうるさい!目の前で叫ぶな!」
第一、今回の件についてはついでだ。
そもそも
私がアザミだということを既に知っているシルキーを逃がすわけがない。
いやぁ、驚いた驚いた。
面接に来ていきなり『ギルドで活躍するので弟子にしてください!アザミ様!!』だからね。
根拠を聞いてみたら納得。
以前の『ユノ』戦の時に私達と『ユノ』以外の複数出撃突破者が彼女だったこと。
自身が持つ『親愛の鐘』の『王』と比べて私の『王』が強かったこと。それも今まで見たこと無い大きさ。
その事から桁違いに強かったとされる最初の王……つまりは私、アザミが所有する最強の王ではないか?と予想したらしい。
そして自身で調べた全メンバーの経歴を見てデータが少なすぎてかつ、サブマスターである私に当たりをつけた。
これを受けて私は危ういな……と思った。
よくよく考えたらうちと直接対決したら分かる人は分かるかもしれない。
私が所有する王はなんというか……特殊な個体だ。
攻撃を学習するというか、攻撃一辺倒ではなく回避、防御も気にしてるというか……物凄く頭の回転が速いと言うべきか。
無論、強いベルレイバーはそれにも対抗できる。
それでも一度でも普通の王と戦ったことがある人は違和感を覚える。
『あれ?俺(私)が戦った王ってこんなに手強かったっけ?』と。
勝手に起源種とでも呼ぼうか。
最初の個体には稀にあるらしい特殊現象、それをもろに受けている。
別の例で言うなら、ミッシェルの『道化師』は強い数字が出やすいとか、ファーストランカー5位『閃光槍』のハヤトの『雷光龍』は雷の規模が桁違いだとか。
とにかく、強さも申し分ない上に身バレが出たので身内に引き入れる事にした。
幸い、私のファンみたいだから私に不利益な事はしないだろう。
……多少模擬戦でもやってやれば師弟関係になった気でいてくれるだろう、真面目に物を教える気は今の私には無い。
して、合格待ちでソワソワしてるだろうところに私が連絡を入れ、今回の出来事に繋がる。
途中の軌道エレベーター搭乗口付近の影から私の影へと招き入れた、だから私に気づかれないだろう遠い位置から私を見張っている監視員だろうと気づかなかったし目の前に来たミッシェル対策にもジャミングコアで対応できた。
影を移動できるって想像以上に凄まじい力だと再認識したよね、これ。
言ってはなんだけど魔力感知系の警備システムが無ければ不法侵入し放題って事だから。
「じゃあ、とりあえずみんなに挨拶しに店舗行きますか?多分まだ殆ど居ると思うし……」
「行きます!」
元気がよろしいことで。
先に端末でエタさんに連絡をいれておくかな。
残ってるメンバーによっては大歓迎の準備をしてくれると思う。
帰還後、やっぱり年少組による大歓迎の体勢が出来ており、質問攻めにされたシルキーの姿があった。
私?……後方で見守ってましたとも。
ゲーレさんが何故か背後で構えてたから逃げられなかったなんて事はないよ?
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