第17回 『異物の道化師』
作者コメ
今のところですが、こっちが短縮版……具体的には次章のトーナメント編で終わりになる可能性大であります。
別の方がブクマもあるので……まだ確定ではないですが……こちらは劣勢です。
今回出てくるキャラとか私楽しく書いたけどなぁ……。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「……いくつか聞きたいことがあったまでだ」
へぇ、
全く、自由人な。
実を言うと私はこの女がそんなに好きじゃない。
この場は
軍人であり、狩人でもあった異色の経歴を持つミッシェル。
それでいて頭が固いわけではなく、魔法という未知にもいち早く対応。
結果として私の後ろをピッタリとくっついている。
これはランキングが出来てからずっとだ。
ハッキリ言ってしまおう、目障りだ。
私とは方針が違うがやっていることは似ている、似てしまっている。
だから私はアヤとして……、
まぁ、それはさておき、
彼女の『異物の道化師』という名、『異物』はその容姿から、と分かるが『道化師』という言葉がどうして彼女に付けられたのか?
むしろ『堅実』とか『堅物』とかお堅そうなイメージが強いだろう。
その理由は彼女が強者と出会った時に、蹂躙ではなく戦いになる時に分かる。
「私なんかで解決するならお答えしまs」
「何故お前のような奴が2番手を名乗っている」
私の言葉を遮るように指摘するのは私の実力不足。
普段からギルドバトルを見ているなら私が『異常だ』という評価が出るが彼女は普段のバトルを殆ど見ない。
ランキングしか判断基準が無い。
「基本的に無所属だったメイビー、キサラギ、カミラ、イオ、マサトを頷かせた手腕については私はエタというベルレイバーを褒めている、少しは面白くなりそうだ、と。だがお前はダメだ、最初のギルド創設でのミスで全て台無しだ」
どうやら創設メンバーの1人、というのは調べたっぽいな。
バトル履歴は見れなくてもメンバー推移くらいなら安値で知れる。
「さぁ?彼なりの理由があったのでしょうねぇ?私の事は何処までご存じ?」
「協会所属で後進の教育をしている点は評価の余地はある、が畑違いだ。お前がトーナメントに出る資格は無い」
「随分と過激なことで。じゃ、コイツを私は『ユノ』に持ち込んでッ!?」
バシュッと彼女の腕は音を発した。
その瞬間に私が左手で見せびらかしていた録音機器は弾かれ、塔から落ちる寸前の所で止まった。
「あー、本日はクロスボウ持ちでいらしたので?」
「死にたくなかったら私の話を最後まで聞くことを薦めよう。私の背に背負っている武器も飾りではない」
うーん、見て見ぬフリをしていたけどやっぱり?
白のローブで隠れていた腕からのクロスボウは予想外、その理由は背負っていた銃にある。
ミッシェルの得意武器は銃、魔法、弓……だが正確に言うと銃(剣)、魔法(杖槍)、(短)弓だ。
背負ったライフルは魔力によって刃を纏わせる事も可能、つまりは遠近両用の武器だ。
戦闘になる可能性を考慮しても銃だけを相手にすることになる、弓までは使わないだろう、と考えていた。
(もしかしたら右腕は杖持ちの可能性も……考えたくないなぁ)
でも納得はしてしまう。
全てを力で擂り潰す彼女の事だ、準備不足の状態で敵の前に現れるとは思えない。
「そういえば、1人トーナメントを辞退したらしいな」
「そうですねー。まぁあれはトラウマになっても仕方ないと思います」
「『ユノ』を利用したメンバー募集、捗っているそうだな」
「……そうですねー」
「1人と言わず、何人か入れ換えようとは思わないか?」
「……思いませんねー」
そんな事だろうと思ったよ。
徹底的な弱者嫌い、ナナちゃんが777ではなく7777だったら番組が成立しなかっただろうと思うくらいに、もはや重度の病気だ。
「やはり分かり合えないか」
「みーんな、エタさんが必要だと思った人を集めてあるんだ。本当はマリアさんとも一緒に出たかったと思う」
「凡庸な人間達を敵として視界に入れたくないという私の気持ちを知るべきなんだ」
「……ということは」
こいつ無自覚か?
「今の私達でも『異物』の目の前に立てるってことかな?」
「何故そんな結論に至る」
「じゃあ説明しよう。そもそも」
「ああ、別に答えは聞いていない」
大規模な魔力放出、その後に彼女の頭上に巨大な火球が発生した。
「まさかここで殺す、とか言う気でしょうか?」
「目撃者はいない。ここに来るまでにお前が接触した人間はいないことは確認済みだ」
「一応あなたお手製の人形さんから手紙を受けてから一度電話しましたが?」
「もしそれが原因で怪しまれたところでどうとでもなる。この地で私が揉み消せない事など存在しない」
人気のない場所でかつ所属地域であるここを選んだのは会話内容と決裂時の後処理のため、ね。オーケーオーケー。
「死ね。凡人。傑物のみでの戦いを私は楽しみにしている」
筋金入りの弱者嫌い、私が言うのもなんだが、ただの戦闘狂……故に徹底的な選民主義者。
だから私は、この展開なんて容易に想像できた。
「新メンバーとしての最初の仕事だ。目の前の最強を叩き潰せ」
「了解!
応える声は私の影から。
深めのスリットが入った黒い着物を纏い、飛び出した彼女は大太刀を両腕でしっかりと握り、迫る火球を一刀両断。
向かいに立つミッシェルの表情には若干動揺の色が見える、ざまぁみろ。
「……確か50位圏内にいる刀剣7位のシルキーだったか?だが魔力反応はどこにも」
「あ、これ。日常的に付けてるんだよね、私」
「チッ。ジャミングコアなんて自分の魔力量を誤魔化すくらいしか使い道は……」
「そうそう。私って魔力殆ど無いからさ。誤魔化してるんだよ」
ジャミングコアは周囲に魔力を微弱に散布し、魔力感知を軽く妨害する魔道具。
シルキーが使った『特典品』は他人の影に潜れるが魔力、気配等の要素は本人の努力以上には隠すことはできないため、敏感な人ならば気づく。
目の前の敏感な人は私の弱々しい魔力……と思っていたジャミングコアの魔力に見事に騙されてシルキーに気付かなかったみたい。
……にしても50位圏内って……、正確に順位を覚えてるのは20位以内って話は本当かもしれない。
「ねぇ
「……それ、毎回私はそう呼ばれるの?」
「だって敬意を示すべき雇い主だもん。ホントに尊敬できる人以外には言ってないけど。それよりさぁ、ちょっとさっきの指示、異議あり!」
「……?それはどうして?」
「だってさぁ」
「あれ、アザミ様より弱いじゃん」
あ、それを言ったら。
「あ?殺すぞ貴様」
「やってみなよ、万年2位止まり」
ミッシェルの右腕には長杖、それに嵌まるルーンを触媒にして魔力が急激に増加。
真夏よりも酷い熱気が周囲に満ちる。
対するシルキーは懐から『
「灰も残さず消えろ『炎禍滅失』」
「『
殺到する豪炎を冷気を纏う大太刀で一閃、明らかに刃が届く範囲の外まで斬っていたことから『王』の鐘の効果をフル活用しているのだろう。
「ハハッ、この程度っ!?」
「舐めるな、小物。アザミを真似たところで貴様はあれにはなれん事を知れ」
牽制の矢を軽いステップで回避しつつ近づくシルキー。
だがミッシェルに慌てる様子は一切無い。
先程の豪炎の後、杖は左手に持ち変えられて空いた右手は背に回っている。
「っ!ホントに剣になるんだ、それ」
「遠隔だけが取り柄だとは思われたくないのでね。私は万能で最強だ」
「嘘つけー、アザミ様の方が強いよ」
1メートル超の銃身に魔力による刃が纏い、シルキーの大太刀を受け流す。
「知ったような口を。奴と戦った事がある人間など存在しない」
「ハハッ!どうしてさ?まさか聞いたの?」
「奴は魔物を殲滅することにしか興味がない。人の事などどうでもと思っている筈だ」
それは正しくない、なんて言うことが出来るのは本人である私だけか。
むしろ私は絶対的な強者として人間を上の存在へと押し上げるために未だ頂点に立っている。
ちなみに
睨まれた事は数えきれないほどあるけど……。
「……『バーン・アクセル』」
「うっは!ホントに杖が槍になった!危ない危ない……って、ヤバッ!!」
爆炎を纏った杖が槍となり、高速でシルキーへと向かう。
彼女は軽々と回避したけどその先に
仕方ないから弾くけど。
「私の『バーン・アクセル』が付与された槍を弾いた……?」
「余所見厳禁!」
「貴様程度、多少目を離したところで問題ない」
避けるべきか悩んだけど偶然を装って弓本体を使って横に逸らす事にした。無論、衝撃で逆側に少し吹き飛ぶことを忘れずに。
あーあ、魔力弓って最低級に近いこれでもそこそこ高いのになぁ……熱で溶けて完全にお釈迦だよ。
……あとでシルキーに請求しよう、彼女には私を守ることもミッションにしてあったのだから。
とまぁ、それはさておき。
戦いはまだ続いている。
私の無事は確信してるものの一応こちらに目をやったせいか、ミッシェルに生まれた一瞬の虚を付く事は出来なかったシルキー。
かち合う銃剣と大太刀は互角、いや、シルキーが若干押してるか。
「ちぇっ、流石最高峰の魔法使い。『王』の鐘使っても魔力刃ごと斬れたりしないかぁ」
「……時間が惜しい」
さて、ミッシェルの二つ名は『異物の道化師』
道化師たる由縁はその『親愛の鐘』にある。
旧サン・ピエトロ大聖堂100階層ボス
『パウラディストート・ジョーカー』
そのボスの特徴は『
彼女は唯一、最強の状態の『道化師』を単独で倒し、その『親愛の鐘』を手に入れた。
その効果は……。
「『
かの魔物の特徴通り、ダイスによる変化式の強化である。
◇◇◇◇◇
昨日投稿し忘れたので一時間後にもう一話投稿されます
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