第7回 初の難敵 他2ギルドの反応


 side『魔法こそ最強!!』


『おいおい、なんで頂上決戦やってるんだよ。ssレートでやってくれや』


『うわ、死んだー。マジで『ユノ』、『王』入れてきてるぜ?しかも初手』


『アホなのかな?あれ遠距離武装のクソザコ防御力だと全攻撃即死で有名なんだけど?』


『遠距離武装の身軽さだったら一撃で死ぬよなぁ。近接でも並の人間は初手の『王の処刑刀キング・エクスキューション』で即死するけど。大人しく『ホロマギ』潰そうぜ、あいつらならいつも通りだろ』


『賛成』


『さんせー』


『それが現実的よなぁ』




 ◇◇◇




 side『ホロウマギカ』


『なんか知らん間に死んだけどあれ何?』


『『ユノ』の防衛の話なら分かるぜ。最近話題の通称『王』が最初にやってくる当たったら即死の広範囲斬撃だ。あれを2回避けれないと今日の防衛は抜けれないぜd』


『いや、『グー』じゃねぇよ。無理だよ!『女王』だけでも厳しいのになんでそんなぶっ壊れ魔物が出てくるんだよ!?』


『あれなー、『ユノ』のギルマスが『焼肉処』の店内で『『王』と『女王』を出す』って言ったのを有言実行した感じ?』


『シンシアってそんなに血の気多かったっけ……?』


『悔しかったんじゃね?『焼肉処』のギルマスをトナメのメンバーとして狙ってたっぽい発言がこの前の『週ベル』であってたし』


『アタシは『週ベル』見てないから知らなかった……、ということは『焼肉処 白鐘』さんももしかして?』


『今絶賛話題のところ。Aレートでの戦いだったけど『女王』と『王』が防衛に出てきたってので話題になって更に『女王狩り』のメイビーがSNSで参加表明したからめっちゃ名が売れた』


『……確かにバケモノだね、あれは。その他にも少なくともSSで戦えそうなメンバーがランク的には3人くらいは居るみたいだし』


『んで、どうする?大人しく異空穴か『まほ最』行く?チャレンジする?』


『……私はその話題のギルド単品で行ってみるよ。久し振りに面白そう。『ユノ』よりは防衛柔いだろうし』


『オーケー。あんたは臨時加入の傭兵枠だから好きに動いて良い。他は無理するなよ?』


『りょーかい』


『らじゃ!』


『分かったぜ』




「『焼肉処 白鐘』……お、あったあった。これかな」

 既にシンシアによって明かされたメンバーリスト、今まで出てきた防衛の魔物。

 やはり注目されてるのはメイビー保有の『女王』と結果的に一度しか現れていない『王』

 そもそもが今まで戦ったギルドが『王』まで辿り着けない者が大半、というか1人しかそこまで行けていない。


「まぁ『ユノ』には打撃2位のメチェーレと刀剣3位のレインが居るし他のメンバーも大半は行けるだろうね……後衛はシンシアとあと2人くらいは確実に行けるんじゃないかな?」

 シンシアは主に事務処理能力が強い、と思われがちだが普通に強い。


 ランキング9位は伊達ではない。


「ん、さっさと行かないと間に合わなくなる。良いギルドの目に止まるように頑張ろう」


 彼女はセコンズランカー43位、シルキー。

 とある人物に憧れ、この業界に入った人物である。


 その主力武装は身長ほどの長さの巨大な刀、サブ武装は投擲用のナイフだ。


「あーあ、もううちの防衛突破されてるじゃん。『まほ最』に負けるなー、頑張れー」

 全く心がこもってない声援と共に、彼女は修羅の道へと足を踏み入れたのだった。




 ◇◇◇




「んーしょっ」

 気の抜けた声と共に振るわれる大太刀、それが幾度も直撃した結果、5つ首の巨大な犬『クイントロス』が消滅する。

 もう1体の大型魔物は『トリガーハーピィ』

 巨大な鳥型の魔物で遠距離から鉄の鎧にも刺さるような鋭い羽根を乱発する魔物。


「今のところはそんな厳しい感じはないけど……後半4体まで体力温存したいなぁ」

『余裕そうだったから』と、ついでに『魔法こそ最強!!』も一緒に出撃していたのだった。

 案の定、すぐに倒せたので万々歳。


「さて、そろそろ次が出てくる……かな?」

 仮想空間に揺らぎが生まれる。


 現れたのは黒い鎧、黒い大剣を装備した大型魔物の中では小さい方のせいぜい3メートルほどの体長の騎士と本日2回目の登場『クイントロス』。


「……なんだっけ、こいつ」

 その魔物の名前を記憶の中から探る一瞬、身体の動きが止まる。


 瞬きの瞬間に黒い剣は彼女の首に迫っていた。

 全身から汗が滝のように吹き上がる。

 何とか刀を間に滑り込ませて後ろに跳躍することで致命の一撃を回避していた。


「……あっぶな。死ぬとこだった」

 実際には死ぬわけではない。ただここまで短くない時間をかけてきた、無駄にはしたくない執念が戦闘を続けるべく動いたのだった。


「『デッドリーブレイド・ジェネラル』だっけ。思い出した」

 ロンドン塔100階層大型魔物、『魔王四諸侯』のうち最初に現れる魔物。


『魔王四諸侯』とは『王』である『マリスブレイド・クルーエルキング』の前に出現する4体の大型魔物の総称。

 それぞれ100、120、130、140に出現する。

 なお、なぜか110階層には大型魔物が出現しない、ゆえに『勇者の休息地』とも呼ばれる。


 通称『暗殺騎士』。目を離すと一瞬で死角に回ってくる危険な魔物だ。

 最初に出てくる四諸侯にしてその中で1番ベルレイバーを殺しているのもこの魔物だ。


 100階層でこんな化け物が出てきたから後の層の期待値が高くなってしまったのだが……正直なところこいつより強いのはそれ以降『王』しかロンドン塔ダンジョンにはいない。

 強いて言うなら140階層の『死海魔術師』が候補に入るくらい。


「目を離しさえしなければそれほど怖くはないけど……なるほど、それで『トリガーハーピィ』入れてるのか」

『暗殺騎士』に目が行ってる間は他が疎かになりがち、あのクソ鳥は正確な射撃こそしないが俗に言う『数撃てば当たる』理論で遠距離から大量の羽根を撃ち続けてくる。

 鳥を落とそうとすれば騎士が背後から、騎士を落とそうとすれば羽根の豪雨に晒され続ける、なるほど面倒だ。


 ん?クイントロス?あれ『まほ最』のゴミ耐久だから数分で終わる、片手間でも全く問題ない。


「次は多分『女王』、優先すべきはどっちか……」

 難易度は『ムズ』で挑んだため、次が出るのは10分後。

 多分頑張っても片方ギリギリ削りきれるかどうか……。


「意外と難しい。難易度設定は『ふつう』でも良かったかも」

 でも、もうこれは私のプライドの問題。


 いくら優秀なメンバーを集めていようと新興ギルドの防衛を突破できないなら私に一握りの精鋭を名乗る資格はない。


「……上等。『王へ挑む者キングス・ランカー』の、50位以内の意地を見せる」



 いつしか、ベルレイバー間での非公式の呼び方が蔓延った。

 それに名誉はない、だが目指すべき場所にはなりうる。

 それこそが上位50名、ファーストランカーにはまだ遠いものの現実的な最上位ランカーの称号として『王へ挑む者キングス・ランカー』が生まれたのだった。

 同時に、それだけファーストランカーに食い込むことが難しいということもこの称号が物語っているのだった。

 所詮、50位以内かれら挑戦者いどむものにすぎないという事である……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る