第2回 ギルドバトル

 作者コメ

 さっさとバトル展開やりたいので本日2回目更新

 ほぼ説明無しにバトルに突入します

 今はとりあえずフワッとした理解でお楽しみください。

 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 本編



 地球に魔物が現れてから数年が経った頃、『命を懸けない魔物狩り』と表して魔物が稀に落とす『親愛の鐘ディアーベル』、これに刻まれた魔物の力を元に魔物自体を再現する技術が開発された。

 この『復幻装置』と呼ばれる機械は魔力炉と呼ばれるエネルギー貯蓄炉に捧げられた魔力量によって強くなる、その魔力は勿論人間が直接注ぐことも出来るが魔物から取れる魔石を入れた方が早いし楽なため、わざわざ自身の魔力で起動することはしなかった。


 人間の方も幻像構築箱アバターボックスと呼ばれる箱と言いながら鋼鉄のベッド、といった感じの見た目の機械の上に寝転がって念じることで仮想空間へと自身の見た目や装備をそのまま飛ばすことが出来る。

 本体は寝ている無防備な状態になるがベッドがバリアのような膜を貼り、保護してくれるため襲われたりする心配はない。


 これでバカみたいに魔力を捧げた強い魔物と戦ったり、他の人から『親愛の鐘』を借りて本物と戦う前に1度仮想空間で戦ってみる、といった事が出来るようになった。


 想像以上にベルレイバー達に好評だったこの技術、これが更に発展した結果がギルドバトルだ。

 最高人数20vs20vs20vs20の80人での戦い、1人1人が最低でも5体の大型魔物と戦うことになる。魔力炉を人間側の強化にも使えるようにして協会はこれを公式のスポーツへと昇華させた。


『誰も死なない魔物狩り』『一般人にベルレイバーという職業を見せる良い機会』『地球では編集されていた戦いも仮想空間なら全て見せられる』

 等といった好意的な意見が多数あったが勿論否定的な意見もあった。


『事実から離れた強さの雑魚を映してどうするよ』『死にたくない臆病者の集まり』『最前線から離れて腕が鈍るのが怖い』

 後日、そんな事を言ったSNSのアカウントは例外無く燃えた、消し炭になる勢いで。

 ギルドバトルの視聴者は当然、ベルレイバーの同業者もそれに加わっていた。


『うるせぇ、死にたがり!』『死ぬのを恐れるのが悪いかっ!!』『最前線を担ってくれるのは感謝してます。ですが僕達はあなた達より後にこの仕事を始めた、いつかあなた達に追い付くために今は仮想空間で戦わせてください』

 言い方はともかくこのような声が殺到した。


 ギルドバトルに一度も出たことがない上位勢もいるが段々と少なくなっていった。

 その少ないベルレイバー達の殆どにトドメを刺したのが最強のギルドを決めるというコンセプトで一昨年前から1年に1度開催されるようになった『ギルドバトルトーナメント』だ。


 普段から勝率、勝利数等の要因でランキングは出されているがギルドバトルをどれだけ真剣にやってるかの差はあるため真の実力は見えない。

 だがトーナメントは違う、まず前の月に山程いるギルドの中の上位514ギルドまで絞るのだ。

 ギルドバトルは4ギルドで争われる、トーナメントでは上位2ギルドがトーナメントを勝ち進み、下位2ギルドが敗退といった形でトーナメント表から消える。

 そうやって数を段々と減らしていき、最強を決めていくのだ。


 ベルレイバー個人でのランキングは協会への貢献度や最前線組としての働き、素材の納品等で決められる。良い狩り場や最前線へのつて、そういうのを利用するには年功序列の面は少しはあるのだ

『俺はこんな順位ではない』『もっと上に行ける!』『単独ではダメでも仲間と協力すれば上位勢にも勝てる!』とギルドバトルに力を入れていくベルレイバーも多くなっていった。

 トーナメントで勝ち進んだギルドにいるベルレイバーは貢献度にもよるが必ずと言って良いほどランクが上がるのだ。


 しかし、しかしだ。


 事実、順位変更はあった。

 しかしベルレイバー上位9名である『ファーストランカー』、その中で少しの変動はあっても彼らの顔ぶれは一切変わっていない。

 特に1位、黒いパーカーのフードを深く被り、身長以上の大太刀を背負っているアンバランスな見た目の謎多きベルレイバー『アザミ』は……、


 ただの1度もギルドバトルに参加せずに『最強』を維持しているのだった。




 ◇◇◇




「大きく出たね?てんちょー」

「ワイの覚悟はもう決まってる。今日がの伝説の始まりや」

「んじゃっ、一先ず今日は一気に蹴散らすとしますかぁ!」

「防衛編成どうする?」

「あ、忘れてた。皆~、今日使う鐘以外で最強の奴出して~!メビさんは『女王』出してよ?4番目に置くから」

「いいよ。オイラ『女王』のバリエーションは豊富だから。サイズは?」

「持ってる中で1番大きいの。どうせ今日は2番目使っても問題なく抜けれるでしょ?」

「オーケー。じゃ、これ預ける」

 アヤの元に合計19個の様々な色の鐘が集まる。復幻装置へとまずは暗い紫色の鐘を4番目、漆黒の鐘を5番目に置く。ここまでは最初から決めていた。


「姫~、あたしは何出したら良き?」

「リッチェルさんは……てんちょー、1から3はどうする?ガチ?舐めプ?」

「舐めプでもいいよ。このレートだと突破できないレベルで防衛バフ積んでるから4番目にすら届かない人いるでしょ」

「ほいよ。じゃ、こんな感じかな……うん。リッチェルさんは今日は大丈夫」

「おーけー、欲しいのあったら言ってね。回してくるから」

 オレンジ、緑、薄紫の鐘を残る枠に入れる。


「じゃあワイからはひとことだけ。『全員、全力を出せ』、なんて息苦しいバトルはまだ早い。だけど」

 緩かった空気が一瞬の内にヒリついた。


「見せてやろうや。ここにいる皆が、俺が選んだベストメンバーだということを。最強を目指すに相応しい存在であることを」

 ひとこと、というには少し多かった。

 しかし、これ以上無いくらいピッタリの激励だった。


「作戦は脳筋、ひたすら削れ、ひたすら殴れ。相手が戦意を失った時点でワイらの勝ちだ」

 一人称も元に戻り、再び緩い空気に満ちた。

 しかし全員心も身体も準備が出来た。


 さぁ、理不尽な力の差を見せる時間だ。




 ◇◇◇




『……おいおい、マジかよ。こんなのS+の上位勢とかのレベルじゃねぇか……』


『おい!貢献1位っ!あれ『女王狩り』のメイビーだろ!セコンズランカー13位だぞ!?』


『旧エジプトのピラミッドダンジョン最下層まで調べに行くのは……無理です』


『偵察班!5番目は多分『女王』だろう、俺達確実突破組の前に4番目まで確認してきてくれ!』

 偵察班とはルーン構成を回避特化、魔物弱体特化、耐え特化等にした突破を考えない出撃者、魔物の構成はこのバトル中は変えれないため、一度こうやって見ておくと他のメンバーが楽になる。


『1から3は判明済み、ギリッギリ避けれてますがそろそろ僕が死にそう。『フレアレオロード』『オロチ』『クイントロス』』


『……3番目以外は案外優しい構成だな?『女王』だけで蹴散らせると思ってるのか?』


『サイズは最大サイズの2.000近いのばかりですが、なんとか死にかけで耐えれてます……そろそろ4番目、出ます!……は?』


『どうした?』


『おい、シュート!報告は!!』


『偵察の仕事しろよ!』


『すいません、死にました。4番目は『女王』です』


『は?』


『は?うわっ、あぶねっ!!そんなシャレにならん冗談言うな!『女王狩り』が居るのに『女王』が最後じゃないわけねぇだろ!!』


『いや、間違いないです。登場時の初見殺し、ほぼ避け場の無い炎魔法『ウルティマフレア』食らって死にました。あれが『ウルティマギア・カースドクイーン』以外に使えるなら今すぐその魔物を教えて下さい』

 このマッチング内で『焼肉処 白鐘』以外で1位を勝ち取ろうと奮闘していた『トライデント』のギルド内チャットは静寂に包まれる。


『女王』と呼ばれる魔物は現時点で確認されてる中で3番目に強いとされる大型魔物、『ウルティマギア・カースドクイーン』

 ピラミッドダンジョン全100層の最下層、言うなればそのダンジョンのボス。

 上半身は包帯でグルグル巻きにされ、顔は見えない、しかし下半身はきらびやかな宝石をあしらったドレスのような姿の巨大な人型魔物である。


 エリアに入った瞬間ほぼ回避場所が無い炎魔法、通称『ウルティマフレア』が放たれ、以降も多彩な魔法で敵対する者を追い詰める。

 中、遠距離での戦いにおいては最強格の魔物だ。

 上位ランカーを最も殺した魔物と言われれば間違いなく『女王』だろう。

 もし運良く『親愛の鐘』を手に入れられたのならば必ず最後に入れる事間違い無しだ。


『じゃあなんだ、『女王』より強いのが5番目には控えてるってか』


『最大サイズの『兵士』でもメイビーの『女王』には勝てねぇだろ、多分1.900オーバーだぞ』


『そのサイズの『女王』を上回れる魔物を俺は『王』か『道化師』くらいしか知らねぇ』

 これだけ恐れられていて3番目だ、まだ最強を誇る『王』お多少のムラはあるが上手く働けば『女王』を上回る『道化師』がいる。


『ギルマス!うちの防衛突破されてます!』


『は!?まだ1時間も経って無いぞ!?何人だ!』


『20人です、全員例の10連勝ギルドです!!』


『……ハハハ』

『トライデント』のギルドマスター、グレンはもう勝ち目がないことを悟った。

 しかし、一矢報いようという気持ちはまだ残っていた。

 せめて自分だけは突破しようと、出撃時間の3時間を全て使いきろうと諦めない、と。


『全員撤退、他のギルドか異空穴に行け、今日の穴は中規模だ、そちらに挑む方が幾分かマシだろう』

 メンバーには2位の維持を頼み、自分は限界に挑戦する。

 これがトーナメントでの勝利を目指す者達か……と自分達の無力さを痛感しながら魔物達との戦いに集中する。

 現在3体目の『クイントロス』がちょうど出現したところ、まだ前の2体は残っているが『女王』が出るまであと30分、1体くらいは倒しきれる。


 グレンは複数人での戦いだが実際の『女王』と相対したことがある、従って最初の炎魔法については来ると分かっていればなんとか回避は出来る。


(……5体目で遊んでくれると助かるが)

 しかし『王』と『道化師』は話や動画では見聞きしたが実際に戦ったことはない。

 4番目に本命の『女王』を置いて心を折る作戦であることをグレンは願った。



(そろそろ来るかっ!!)

 期待したのは『アンストラグラン』のような初期の大型魔物、現れたのは……。


 黒い鎧に血を思わせる真紅の外套をたなびかせた人型の魔物だった。

 その頭には小さいながらも『自分が王だ』と主張するような金色の王冠があった。


 右手には今まで殺されてきた魔物の、かの王に従う臣下達の怨念が宿ったような禍々しい、漆黒の巨剣。

 その顔は憤怒に染まったような赤黒い仮面で覆われている。


 旧イギリス、ロンドン塔ダンジョン全150階層の最下層ボス、通称『王』

『マリスブレイド・クルーエルキング』


『あーあ、終わったわ。……バッカじゃねぇの』

 最後にそう言い残し、グレンの首は胴体と別れを告げた。



 ギルドバトル終了

 マッチング内平均レートA1300

 1位『焼肉処白鐘』3230万

 2位『トライデント』160万

 3位『末所属』120万

 4位『永山園』61万



『焼肉処白鐘』は以降3日間連続で1位。


 そして日曜日、ギルドバトルが休みの日へと時間は進む。

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