第47話 最後の戦いですわ! 

 わたくしは、ステイサメさんがデヴィル・シャークに飲まれていたとしても、救い出す自信があります。


「な、なんですって!? 見なさい、ルクレツィア。あの侵食具合を! もはやあなた人間の力では、どうにもならないほどに同化をはじめているわ! あなたに彼女は救えないわよ」

「救います。そしてラトマ、わたくしはあなたを許しますわ」

「くう!? まだ言うの!? 姉気取りの人間がぁ!」


 ラトマが、チェーンソーをわたしに振り下ろしました。


 ですが、わたくしは黄金のヤリでラトマのチェーンソーを叩き落とします。


「バカな!? いったいあなたのどこに、そんな力が!?」

「わたくしが強いのではありません。あなたが弱くなったのです!」

「私が、弱い? なにをふざけたこと、を……」


 落下したチェーンソーを、ラトマは持ち上げようとしました。


 しかし、指がいうことを聞きません。


「そんな、どうして?」

「わかりませんこと? あなたの影から、デヴィル・シャークはあなたの力を吸っていますのよ!」


 わたくしの指摘を受けて、ラトマが足元を見ます。


「こ、これは」


 ラトマの魔力が、影を伝ってデヴィルシャークに流れ込んでいました。


 彼女だけではありません。他の人たちからも、デヴィルは魔力を吸い上げているではありませんか。


「あなたはデヴィルを操っていたと思っていたのでしょう。ですが、本当に操られていたのはラトマ。あなたなのですわ!」

「こんなの、なにかの間違いよ!」


 弱った力を振り絞って、ラトマはチェーンソーを握り、持ち上げます。


「くおお!」


 魔力で動く機械ですから、いくらスイッチを入れても動きません。


「どうやら、本当の敵が誰なのか、理解できたようですね?」

「私は、深きもののエサに過ぎないの?」

「問題ありませんわ。わたくしなら、すべてを救えます!」


 わたくしは、シャークトパスに向けて槍の先を向けました。


 シャークトパスとなったデヴィル・シャークがわたくしに触手を絡ませようとします。


「サメの型!」


 ヤリを旋回させて、わたくしは触手をすべて撃ち落としました。


「ルカン!」


 シャークトパスの中心に、ステイサメさんを確認します。


「今助けますわ!」


 ですがもはや、サメパーカーは真っ赤に染まっていました。ステイサメさんの意思を離れ、完全に筋骨隆々の腕を生やします。


「そんなハンパな上腕で、わたくしを止められませんわ!」


 巨大なサメの腕に、わたくしはヤリを振り下ろしました。


 しかし、ビクともしません。


「だったら、これならいかがでしょう?」


 わたくしは、ラトマが落としたチェーンソーにスイッチを入れました。


「くらいなさいまし、【ラスト・チェーンソー】!」


 二刀流チェーンソーを、わたくしは辺り一面に振り回します。


 父やデジレ、ちゃんさんを縛っていた触手を切り刻みました。


「おっ、やっと自由になったぜ!」

「これなら、トオー!」


 デジレとエビちゃんさんが、息を吹き返したかのように奮闘します。父も、自前のサメを使って触手を食いちぎりました。


 あとは、ステイサメさんだけですわ。


 わたくしをぺしゃんこにしようと、サメの手のひらが迫ってきました。


「やらせません!」


 チェーンソーを水平に構えて、敵の手のひらに突き刺します。


「トドメですわ!」


 わたくしは、サメパーカーの脳天にヤリを突き刺しました。


「ぐええええ」と悲鳴を上げて、赤いサメがステイサメさんを吐き出します。パーカーも、元の青いままで。


 ヤリが光り輝きました。赤いサメの魔力を吸い上げているのだとわかります。


 いや、まだ終わりではありません。


「シャークトパス、いいえ、赤の女王! あなたにわたくしの親友は渡しませんわ!」


 呼びかけに応じたのか、触手の一本が女性の上半身を形作ります。


 ナイアさんでした。

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