最終章 侵略者に、サメのアゴを食らわせて差し上げますわ!

第41話 聖地で父と再会ですわ!

「まだ小さかったのに、覚えていてくれたか。ルクレツィア」


 わたくしの前に現れたのは、紛れもなくおとうさまです。口の周りに髭がボーボーに生えておりますが、間違いありません。肉親の顔など忘れるはずが。


「ルカン、下がって。ニセモノかもしれない」


 ステイサメさんが、わたくしの盾になって守ってくださいました。


「キミが、娘を守ってくれていたのか?」


 おとうさまが、ステイサメさんに声をかけます。


「ワタシはステイサメ。ルカンはワタシが守る」

「俺はルクレツィアの父、シャイダー・シュヴェーヌマンだ。今までルクレツィアを守ってくれて、ありがとう」


 ステイサメさんに頭を下げた後、笑顔を見せました。


「大丈夫ですわ。ステイサメさん」


 わたくしは、ステイサメさんに下がっていただきます。


 ステイサメさんもすっかり、毒気を抜かれていますわね。


「ぐう」と、ステイサメさんのお腹がなりました。彼女は、恥ずかしそうにうつむきます。


「あはは。ついてきなさい。大したおもてなしはできんが、ごちそうしよう」


 おとうさまが、小屋へわたくしたちを招きました。


 どうも、おとうさまのお家はかなり質素なようです。貧しい生活というより、合理的といいましょうか。魚もコメも、必要最低限の分量しか置いていません。来客なんてないでしょうし。


「どうぞ」と、おとうさまは料理を振る舞います。焼き魚、おにぎり、貝のスープですわ。デザートは、マンゴーまるかじりです。


「貴族としてのもてなしとは程遠いが、これが精一杯だ。お前たちなら、食い慣れているんじゃないか?」

「とんでもありません。どのお貴族のランチより、ごちそうですわ」


 なんせ、実の父が用意してくださったんですもの。


「ありがとうございます。まさか、父にお料理を振る舞っていただけるとは」

「ワタシからも、ありがとう」


 ココナッツのジュースを飲みながら、ステイサメさんがお腹を満たします。


「いいんだよ。それにしても【ステイサメ】か。伝説のサメと同じ。まさかな」


 おとうさまは、考え込むポーズを取りました。 


 本来なら、胸に飛び込んで抱き合う場面なのでしょう。


 ですが、今は一大事です。


 積もる話はありますが、事情を聞かないと。


「ここはいったい、どういった場所なんです? 聖地とおっしゃっていましたが」


 島の周辺を眺めました。


 なんとも異様な光景です。島の周りを、【シャーク・ネード】が囲んでいました。空が空洞になっていて、陽の光はそこから入ってくるのですが。


「ああ。ここは【深きもの】を打倒するためのアイテムが眠っている。奪われてはいけないため、現世から切り離した領域なのだ」


 リヴァイアサンの攻撃を受けたおとうさまは、サメの神に導かれてここに打ち上げられました。サメの試練に打ち勝ち、今は秘宝の守護者をしているとか。


「見ての通り、俺は不老不死となった。ヒゲは生えるがな。この領域が持つ特性のおかげだ」


 たしかに、写真とまったく変わりがありません。いなくなって、もう一〇年以上は経ちますのに。


「ここは、時間の流れが止まっているらしくてな。ここにい続ける限り老化しないし、死なない。たとえ殺してもな」


 おとうさまは「しかし」と、続けます。


「一生出られない」


 なんと。


「ルクレツィア。お前がここに漂着したということは、ダークワーカーの導きが合ったからだろう」

「ええ。このヤリですわね」


 わたくしは、黄金のヤリを見せました。


「お前の選択肢は二つ。ひとつ、聖地の主を俺から引き継いで、一生ココで過ごす」


 永遠に死なないこの場所で、ステイサメさんと一生暮らせる。そう、おとうさまは言います。


「もうひとつは、試練に打ち勝ち、俺からヤリの所有権を奪う。そしたら、地上に出られる」


 死なない身体は、手に入りません。が、エビちゃんさんやデジレが待つ地上へは戻れます。


「ここに来たからには、選択肢は二つにひとつ」

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