第39話 (改稿)さあ、「あーん」とおっしゃいまし!

「おのれルクレツィア! 半人前といえど、サメ使いかっ!」


 苦しそうに、神官がうめきました。もはや虫の息といったところでしょう。


 しかし、油断はできませんわ。


 こちらも、手加減をするつもりはありませんがっ!


「くらえ、【シャーク・ショック】!」


 再び、ステイサメさんがオーラを発動しました。特大の黄金のサメが、ステイサメさんの手から形成されていきます。二発連続で、黄金サメを放ちました。顔に続いて、ボディに。


「ぐいいいい!」


 リヴァイアサンも神官も、お腹を押さえてうめきます。黄金サメは噛みつくことはできないようですが、相手に当たると爆発するようですね。


「だが、致命傷には至らん! 我こそはリヴァイアサン! 神が作りし創生の要塞! サメ使いごときに破れはせぬ!」


 リヴァイアサン神官が、不沈艦を自称しています。


「ならば沈みたいと言うまで沈めるまでですわ!」


 大量のシャークショックを、リヴァイアサンに浴びせました。


 頭部へ向けて撃ち込んだものは、神官がそらしてしまいます。ですが、身体の何処かで爆発を起こしました。


 わたくしは黄金のヤリを振り回し、ステイサメさんに力を与え続けます。


「こちらには、まだまだ余力がありましてよ!」

「くそお!」


 杖で刺突し、神官がわたくしの魔力供給を妨害してきました。


「タコツボの拳ですわ!」


 わたくしは、杖を掴んでグルグルと胸の前で転がします。


 コントロールを奪われまいと、神官も杖を握りしめていました。


 ですが、腕力はわたくしが上です。杖を奪ってやりました。


「返せ!」

「ええ」


 ウミヘビの上顎に、わたくしはケインのカギ部分をひっかけます。


「リヴァイアサン! 『あーん』とおっしゃいなさいまし!」


 わたくしは強引に、リヴァイアサンの上アゴを持ち上げました。足を広げて、ウミヘビの口を押さえます。


「何をする気だ?」

「こうするんですわ」と、わたくしはリヴァイアサンに杖を食わせてやりまた。


 杖が、リヴァイアサンのアゴに引っかかってしまいましたわ。


 また「ぐえええええ!」と、リヴァイアサンが声を出しました。まるで泣き出したかのような。


「今です!」

「とどめだ。【シャーク・ショック】!」


 大きく空いた口の中へ、ステイサメさんが特大の黄金サメオーラを放ちました。


 黄金サメを食らって、リヴァイアサンの皮膚が破裂いたします。

 ノドから胃袋にかけて黄金の炎に焼かれて、無惨な骨だけになっていきました。


「ごおおおお!」


 神官も、黄金色にこんがり焼き上がっています。全身が骨だらけになりました。


「ルカン! 今のうちに乗り込め!」


 デジレが、わたくしの位置まで船を誘導してくれます。


「はい!」


 わたくしはステイサメさんとともに、デジレの操る船にダイブしました。


「させるか! 我が術によって、葬り去ってくれる!」 


 シャボン玉が質量を持ったような水の弾を、神官が最期に飛ばしてきます。その直後、神官は全身バラバラになりました。リヴァイアサンとともに、海へと沈んでいきます。


 ですが、わたくしは神官の飛ばした異様な形の水の弾を、避けきれません。


 かわせないなら、打ち返すまで!


「てやあああ!」


 わたくしは、七色の弾をヤリで跳ね返しました。


「はああ!?」


 神官が、信じられないという顔に。


「ぬぬう。まだだ! 脳にダメージは通っておらぬ!」


 あれだけの攻撃を受けて、なおも再生を始めました。


「ルカン、こっちだ!」

「はい。でも!」


 わたくしは、エビちゃんさんの広げた手の方へ落下しようとします。ですが、届きません。


 ここままでは海に、と思っていたその時、赤い板にわたくしは落ちました。


「これは、いったい?」


 何もかもが赤い、高速艇のようです。


「赤い船! レッドノーティス号!」


 タラさんが、船を指さして叫びました。


「あれは、海軍か?」


 エビちゃんさんも、驚いています。


「ひさしぶりね、姉さん」

「あなたは、ラトマ?」


 わたくしを助けたのは、妹のラトマでした。

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