第38話 黄金のサメですわ!

 神官の攻撃を受け止めながら、わたくしは考えを巡らせます。


「ルカン、そいつはただの思念体だ! 本体はこっちのウミヘビなんじゃねえのか?」


 船の上から、デジレが仮説を立てました。


 そうとしか、考えられませんわね。


「しかし、船からでは攻撃できない!」

「ですわね!」


 海軍の砲撃で、リヴァイアサンは弱っています。ですが、致命傷とまではいきません。弱点を見つけ出さないと。


「観念して死ね、ダークワーカー! もともとこの世界は我々が支配するはずだった! それを邪魔したのが貴様らサメ使い【ダークワーカー】だっ! しかし、その伝説も今日で終わる!」

「終わるのは、あなたの方ですわ!」


 深きものは父の仇、根絶やしにさせていただきます! 


 五獣の拳で、神官を殴り飛ばしました。


 神官は顔を潰しても、四肢を破壊しても再生し続けます。


「ムダよ。いくら攻撃しても、本体を潰さねばいくらでも再生する!」


 それは百も承知ですわ。破壊が目的ではありませんの。


 ですが、悟られないようにせねば。


 ヤツの動きには、法則性があるように見えてなりません。なにか、決定的な動きがあるような。


 たしかに、神官はいくら攻撃されても、その場から動こうとはしません。


 神官の真下にあるのは、脳ですわ。


「ウニの拳!」


 わたくしは、足元につま先を突き刺しました。わたくしの爪から発せられた衝撃波が、骨を突き抜けて脳へと到達したのです。


「ぐえええええ!」と、リヴァイアサンが喚き散らしました。


 さしもの巨大生物も、脳をやられてはひとたまりもないようですわね。


 しかし、硬い骨を一撃で破壊なんて。



……だからこそ、ダークワーカーなのですね?



 この海域は、どのくらいでしょう。すっかり、陸から離されていますわね。攻撃の後、うまくあの船にとりつかないと。


「ステイサメさん、ヤリを!」


 わたくしは、シャークネードを発動しているステイサメさんに声をかけました。


「わかった! 受け取ってルカン!」


 ステイサメさんが、ヤリをわたくしに投げ渡します。


 ヤリを受け止めた後、キャンディケインに魔力を注ぎ込んでいきました。


「く、この!」


 神官が、杖を伸ばしてきます。


 わたくしは、体さばきだけで避け続けました。


 この杖にも、なにか仕掛けがあるような気がしてなりません。

 この出会いは、きっと意味がありましてよ。


「フフ……ありましたわ」

「なにをしても、同じこと! ダークワーカーと相打ちになった際に、そのヤリの性能も弱体化させた! 貴様の浅知恵を持ってしても、リヴァイアサンは討ち滅せ……ぬぅ!?」

「いま、なにかおっしゃいましたか?」


 わたくしは、ヤリの先にキャンディケインを突き刺しました。


 この棍には、穴が開いています。

 その穴に、ケインを突き刺してみると、ピッタリではありませんか。


 ステイサメさんに魔力を送るときも、このケインからでした。


「うわ!?」


 なんと、ステイサメの手に何かが握られます。黄金のサメのオーラではありませんか。ステイサメさんのてから浮き上がっているサメ型のオーラが、ピチピチと跳ね回っておいでです。


「まあ、この武器は、ステイサメさんのものではなかったのですわね?」


 わたくしのようなサメ使いが持って、初めてステイサメさんの真の力が発揮されると。


「だがまだ不完全! そんなチンケな技で我を……ごうう!」

「だまらっしゃい」


 神官がしゃべっている間に、ステイサメさんに指示を送っていました。うるさいウミヘビの腹に、黄金のサメを叩き込んでくださいまし、と。


 いやあ、面白いくらいに跳ね上がりましたわ。今までの苦戦はなんだったのでしょう。


「ここまで強かったのですね? ステイサメさんは」

「いやルカン。キミが神官を倒し続けていて、レベルが上ったからだよ」


 そうでしたの? 実感がありませんのに。


 まあいいですわ。トドメと参ります!

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