第37話 不死身ですの、この神官!?

 サメの嵐を、わたくしは階段のように駆け上がりました。


「ルカン!」

「平気ですわステイサメさん! デジレは船を!」


 わたしが合図をすると、デジレが「わかった!」と船を起動させます。


 海軍さんも、軍艦の大砲をリヴァイアサンに放ちました。砲撃し、どんどんと陸から離します。


 バロウズ女史が用意してくれた機械仕掛けの船に、ステイサメさんも乗り込みました。


「そのまま【シャークネード】を起こし続けてくださいまし!」


 船の上から、ステイサメさんはシャークネードを起こします。リヴァイアサンを、さらに陸から遠ざけました。


 大砲が命中するたびに、リヴァイアサンが身体をくねらせます。しかし、ダメージが通っている気配がありません。


「ワタシが技で、相手の皮膚を食う! 傷口に砲撃して!」

「わかりました! 撃ち方、用意!」


 情けないフォスターさんを港に置き去りにして、タラさんが指示を出しますわ。 


 巨大ヘビは、シャークネードでズタズタにできるでしょう。ですが、この神官リヴァイアサンはそうはいきません。わたくしの手で、とどめを刺さねば。


「一対一ですわ。神官!」


 わたくしは巨大ヘビの頭に降り立ち、キャンディケインを神官に突きつけました。


「ぐぬう。ダゴンを殺し、我が前に立つかルクレツィア! 忌々しいシャイダーの娘!」

「しぶとさには、定評がありますのよ!」


 安定の悪いヘビの頭ですが、わたくしは地に足をつけております。


 砲撃やシャークネードからくる波しぶきや台風のような洪水にも、わたくしはびくともしません。


 これも、エビちゃんさんのトレーニングのおかげでしょう。


「小娘が! シャイダーと同じく、海へ沈めてくれる!」

「やはり、あなたが父を!」


 わたくしのケインによる刺突を、リヴァイアサンは杖で弾き返しました。


「サメ使いは等しく死ぬがよい!」


 水の球体を何個も形成し、わたくしに投げつけてきます。


「水棲五獣の拳、ウニの型ですわ!」


 爪に風の魔法を施し、水の攻撃を切り裂きました。


「やはりこの程度では!」


 リヴァイアサンが、杖で殴ってきます。


「貝の型ですわ!」


 敵の杖を、ヒジとヒザで挟み込んで破壊しました。


「なんと! 水棲五獣の拳とは!? シャッコー族以外に継承するものが!」

「わたくしに不可能はありませんの!」


 シャッコー族直伝の、パンチをお見舞いいたします。


 神官リヴァイアサンの、アゴが砕けました。そのまま海へ……落ちませんわ! なんと、身体が再生するではありませんか。


「もう一発、お見舞いいたしますわ!」


 手をシャコのハサミ状にして、また殴りかかります。


 しかし、杖でパンチの軌道をそらされましたわ。杖まで復活するとは。 


「多少の格闘経験なら、こちらも遅れを取らぬ!」


 リヴァイアサンの杖の先が、わたくしの心臓を刺そうと迫ります。


 水と風の魔法を使って【目潰しの霧】を作り出し、吐き出しました。といっても、ただの酸味の強い液体です。


 神官が、大きくのけぞりました。


「スキありですわ!」


 わたくしは、キャンディケインを神官の顔に向けます。


【ウォーターガン】にて、神官の頭を吹き飛ばして差し上げました。


 ほんとはもっと酸の濃度が強い毒霧を放ちたいのですが、わたくしの身体が溶けてしまいますゆえ。


「おのれ、見たこともない煙幕の技を!」


 また、再生しましたわ。不死身ですの?


「今のは、アメフラシの型ですわっ!」


 杖とキャンディケインが、何度もぶつかり合いました。


「そんな技はないぞ!」

「当然です。オリジナルでございますから!」


 ペッと、口に残った酸っぱい液体を吐き出します。


「ぎいいいい!」


 酸っぱい液が目に入ったのか、リヴァイアサンが苦しみだしました。


「ぬうう!」


 神官まで、目を押さえ始めましたわ。時間差で効くのでございましょうか?


「聞け、ルカンッ! そいつからは、生体反応を感じないぜっ!」


 船を操縦しながら、デジレがこちらに呼びかけてきました。


 つまり、この神官は本体ではない?

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