第24話 財宝の使い道がありませんわ

 その後も数日かけて、我々は沈没船の探索を行いました。


「どう、ルカン。お父上の情報は手に入りそう?」


 ステイサメさんが、わたくしを心配して声をかけてくれます。


 ですのに、わたくしったら首を縦には振れません。


「あの写真がどこで手に入ったか、わかればいいんだけど」

「ギルドで、聞いてみますわ」


 結局、めぼしい情報などは見つかりませんでしたわ。


「すまない。ワタシばかり強くなってしまって」


 エビちゃんさんのプロテクターを、ザラタンの甲羅を加工してアップグレードしたくらいです。ちゃんさん本人は、「気持ち悪い」と言っていましたが。とはいえ、この先どんな魔物が襲ってくるかわかりません。強くなることに越したことはありませんわ。


「ちゃんさんは、前衛なのです。生存率の高さは必須ですから。お気になさらず」

「ああ。壁役として、しっかり働く所存だ」

「いえいえ。あなたは仲間ですから」

「ありがとう」


 強くなるといえば、ステイサメさんです。


 わたくし、【サメ使い】としてさらに強くなる必要を感じてしました。


 ステイサメさんを強くするには、サメ使いであるわたくしが強くならねばなりません。相乗効果シナジーといいまして、わたくしの強さはステイサメさんのレベルに直結いたします。


「まったく、レベルが上がらなくなりましたわ」


 半魚人なんていくら倒しても、レベルが上がりません。奴らも弱いですが、わたくしたちも強くなりすぎています。


 あんなほぼ無限湧きのザコどもなど、いないのも同然ですし。


 ザラタンを倒したことで、わたくしたちはかなりのレベルアップを致しました。


 とはいえ、ザラタンごときに遅れを取るとは。


 あのような手合を、弱点をつく以外で倒せるようになること。それが、今では急務と思っております。


 沈没船で見つかったアイテムなどで、装備品の見直しをいたします。


「ビキニアーマーですが、幾分か強度の強いものを手に入れましたわね」

「そうだね。現段階では最強だろう」


 わたくしの普段着は、Tシャツとホットパンツに切り替わっておりました。その下は、城の貝殻ビキニアーマーです。貝殻で、局部を覆っているわけではありません。貝殻自体を、水着に加工しているのですわ。より魔法剣士に近づいた気がします。


「キャンディケインも、強いよね」

「ええ。ドゥカヴニーの鍛冶屋さんに、鍛え直してもらいました」


 ステイサメさんですが、パーカーを加工しています。また、念願の武器を手に入れましたわ。三叉戟さんさげきでしてよ。こちらも鍛冶屋さんで手に入れましたの。


 ただ、それでも財宝の使い道までは考えつきませんでした。我々では、持て余してしまいます。換金したとしても、お金の用途は見つかりませんですわね。


 まあ、どのみち使い所はあるでしょう。それまで、ギルドに預かっていただきます。


 気を取り直して、父の写真があった額縁の持ち主を探すことに致しましょう。


「一つだけ心当たりのある場所があるのですが、ほとんど廃墟なのです」

「どういうことですの?」

「半魚人、あなた方が【深きもの】と呼ぶ連中によって壊滅させられた街があるのです」


 向かいの大陸にある、半島の街だといいます。


 おそらく沈没船は、そこからこちらへ向かったのではないかとのこと。


「額縁の細工からして、税金逃れもあったでしょうけど、お写真の保存状態から見て、持ち主があなたを心配なさっていたのは本当のようですので」

「なるほど。行ってまいりますわ」


 次の目的地が、決まりましたわ。


「ですが、気をつけてください。あなたを狙っている海軍がいます」

「海軍が?」


 はて。我々って、そんなに要注意人物でしたっけ?


「詳細は不明です。あと、あなたのお父上……義理のですかね。亡くなったと報告が」

「……そうですか。とうとう処刑されたのですね?」

「それが、妙でして」


 ギルドマスターのエルフさんが、眉をひそめます。


「実は、処刑される予定は今日だったのですが、前日に死にまして」

「それは妙ですわね」

「一番変なのは、死因なのです」


 継父は不健康な生活をしていたのは確かです。酒の量も多かったですし。しかし、牢屋で自害するような度胸もありません。


「義父はどんな死に方を?」


 わたくしが聞くと、エルフのお姉さんは、ため息交じりに告げます。


「それが、溺死なのです」


 牢屋で?

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