第22話 新技・【殺人避妊具】ですわ!

 昨夜、【海賊】で取れるネタスキルで、わたくしたちは爆笑のまま眠りにつきました。その時わたくし、思わず「ギャハハ」と腹の底から笑ってしまいましてよ。


 それが今日、もっとも頼りになるスキルとして覚醒するとは!


 世界は、わからないものですね。


「ルカン、もうその技しかないよ。やってみよう」

「ですわね!」


 切り札は、思わぬところに転がっているものでしてよ! 



「秘技、【殺人避妊具マンイーター・スキン】ですわっ!」



 わたくしは、キャンディケインを振り回しました。


 先端が光り、スライム状の風船が召喚されます。目はありませんが、口をパクパクとしていました。呼吸で、こちらを認識しているのでしょうか?


「こんにちはスライムさん、さっそくですが、あの化け物のアレにかぶさっていただけますか?」


 恐る恐る、わたくしはスライム風船に指示を送ります。


 ドウっとスピードを上げて、スライム風船がザラタンの下腹部に直行しました。言葉は通じたようですわね。


 風船の口に、サメの歯が生えてきました。


 クモのシッポからニョキッと生えたセンシティブな部位に、食らいつきます。


「09w098qt0えglさ:fkぁsゔぁs,:!」


 言葉が話せないのか、奇声を上げてザラタンがエビちゃんさんを放しました。


「捕まって!」

「すまん! 助かった!」


 ステイサメさんに、ちゃんさんが手を伸ばします。


「ついでにご自慢のソレを、ちょん切ってさしあげますわ!」


 いきり立つモノを、ブチッと噛みちぎってやります。


「ーいrt;y0@pけr,:ldf!」


 またしても奇声を発しながら、ザラタンは逃げていきました。


 こう見ると、少し哀れに見えますわね。 


「では、スタコラサッサですわ!」


 探索も大事ですが、とにかく帰らねば。今のままでは、ザラタンを倒すことは不可能です。なにか、弱点を見つけ出さないと。幸い、貴重なサンプルもいただけたことですし。


「オラトリア王国へ戻りましょう」

「いや。今から人間の街へ行く。冒険者ギルドで調査をしてもらうぞ」


 ちゃんさんの城であるオラトリア王国では、調査は難しいだろうとのこと。武器や薬品の加工は得意なのですが、敵の弱点などを調査するのは苦手だそうです。シャッコー族はいい意味でも悪い意味でも、脳筋なのだそうで。


 というわけで、人里といいますか、人間の街【ドゥカヴニー】へ。


 受付の方は、大人の女性といった感じのエルフさんです


「こんにちは。旅の方。おやおや、シャッコー族のエビハラ様ではありませんか! 珍しいですね!」


 エビちゃんさんの顔を見た途端、エルフさんがただならぬ表情になりました。


「世間話は後だ。事態は急を要する。急ぎギルドマスターを呼んでくれ」

「ああ、はい。今はわたしがそうです」


 エルフさんがギルマスさんでしたか。それなら話が早い。


「お父上は?」

「母とハッスル中に、ぎっくり腰になって引退を」


 まったく、殿方って……。


「皆さんは、どういったご要件で?」

「実は、こちらを調べていただきたく」 


 手に入れた触手の一部……というか【殺人避妊具】に閉じ込めた部位を、冒険者ギルドの専門機関に持ち帰りました。触りたくもありませんが。


「お預かりします。うわあ」


 五〇センチはあろうイチモツを掴みながら、エルフさんは顔をしかめました。


「生命機能は停止しているようですので、調査いたしますね」


 さっそく、エルフ総出で研究をはじめています。


「それにしても、ザラタンの破片を持ち帰るとは、勇気のある方ですね?」

「いえ。当然のことをしたまでですわ」


 特に威張ることなく、わたくしは振る舞いました。


「あなたのやったことは、素晴らしいことですよ」


 翌日、再度冒険者ギルドへ向かうと、弱点がわかったとの報告が。 


「なんでも、【セレン】という科学物質が、ザラタンには効くそうです」


 エルフさんが言うと、エビちゃんさんが手をポンと叩きました。


「セレン! そうか。セレンと言えば」

「なんですの、ちゃんさん?」

「シャンプーだ!」

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