第21話 仲間が「クッコロ」のピンチですわ!

 わたくしは、胸の小さなペンダントを取り出します。養父に見つからないように、肌見放さず胸元に隠していましたの。


 写真に写る幼子の持っているものと、まったく同じですわ。


「これが、わたくしの本当の両親?」


 子どもを抱いているのは、三〇代くらいの若き海賊です。隣にいるのは、優しそうな女性ですわね。


「ご両親は、どうなったの?」

「本当の母は、わたくしを産んですぐに亡くなったそうですわ。父はわたくしを置いて、危険な海の調査へ行ったとか」


 わたくしの父を死亡扱いして、親権を奪ったのが、父の兄シュヴェーヌマンですの。


「じゃあ、お父上もスケルトンの仲間に?」


 わたくしは、エビちゃんさんの疑問に首を振ります。


「いいえ。父はそんな弱い男だと思えません。どこかで生きているような予感がしますわ」

「父を思うお前の気持ちはわかるぞ、ルカン。だが、何十年も海の底では暮らせないぞ」

「かもしれません。ですが、父は死ぬとしてもタダでは死なない気がしますのよ」

「そうか。お父上が見つかるといいな」

「ありがとうございます、ちゃんさん」


 引き続き、調査を開始しますわ。


 そのときです!


「なあ!?」


 触手のようなものに、突如ちゃんさんがさらわれてしまいました!


「こいつ、ザラタンだ!」

「安全地帯から出るのを、狙われたんだよ!」

「くそ、二人は逃げろ!」


 ちゃんさんが、触手に攻撃を加えます。


 ですが、ビクともしませんわ。


「こうなったら、ステイサメさん、【シャークネード】ですわ!」

「よし!」


 その場でステイサメさんがウインドミルダンスを行い、渦を巻き起こしました。


 ザラタンの巨体が渦に巻き込まれていきます。


「待って! お止めなさって!」

「どうしたの!?」


 ステイサメさんが、わたくしの合図でダンスをやめました。


「あれでは、ちゃんさんの目が回るだけですわ!」


 まったく、ザラタンにダメージが入っていません。それどころか、ちゃんさんの顔が青ざめています。三半規管を狂わされ、酔ってしまったのでしょう。


「くう!」


 みるみるうちに、ちゃんさんのプロテクターが剥がされてしまいます。あれは皮膚ではなく、装備品なのでしょう。


 胸パーツが取られて、品のいい美乳がさらけ出されます。続いて脚の装甲を剥ぎ取られ、白いオミアシが露出しました。


「うん!?」


 なんと、ちゃんさんが急に足ピンをなさいます。何事でしょう?


「見てルカン、耳の裏を刺激されている!」


 ザラタンの触手が、ちゃんさんの耳裏にある触覚をなでていました。


「あの器官は、シャッコー族にとっては呼吸器でもあり、性感帯なんだ」


 触覚を合わせることによって、シャッコー族は求愛行動を取るそうです。


「ぬう、殺せ! 辱めを受けるくらいなら!」


 苦痛と快感が入り混じった顔で、ちゃんさんが触手を足で蹴り続けました。


 ですが、やはり、ザラタンの分厚い装甲とブヨブヨの粘膜にはダメージが通りません。


 なんと、ザラタンが全貌を現しました。船に隠れて姿が見えませんでしたが、とんでもない大きさです。カニの胴体と、クモのシッポを持つ怪物でした。赤い無数の複眼を光らせています。


 クモのシッポから、はしたない物体が屹立いたしましたわ! これは、とても言葉では言い表せません。


 現れたのは、まさしく殿方の生殖器です。ああもう、はしたない! 殿方のイチモツって、どの人もあんな形をなさっていますの!? 信じられません。ちゃんさんの肢体を見て、さらに盛り上がっているように見えました。


「ひぎい!」


 気丈なちゃんさんも、ザラタンに不気味な形の生殖器を見せつけられ、青ざめました。


 このままでは、ちゃんさんが素裸にされてしまいます。


「なんとか助けないと!」

「それなんですが、ステイサメさん。こちらなんていかがでしょう?」


 わたくしは、あるスキルを指さします。昨夜、パジャマパーティで見つけたネタスキルでした。


「女性だけが扱える、護身用スキルだ。ルカンは、このスキルを取るの?」

「こんなスキルくらいしかありませんが、今は効果があるかも」



 それは、「敵の生殖器をダイレクトに噛みちぎる」スキルですの!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る