第20話 財宝でしてよ!

「ルカン、まだこんなに」


 大量の貴金属を手にとって、ステイサメさんが戻ってきます。


「あらまあ、これは五〇〇年前のツボですわ。こちらは……あらあ、一七〇〇〇年前の鉄の剣ですわね」


 実はわたくし、【鑑定眼】を持っていますの。貴族ですから財宝類を扱う手前、資格を取らされましたのよ。


 金貨銀貨の他に、宝石類まで出てきました。無造作に。まるで守る気がありません。こんなに価値のあるものなのに。


「ホントですわね。あらまあ、歴史的価値のある銅貨と、今でも使える金貨が見つかるとは」

「そうだ。我々も、こんなに古い鱗貨りんかは初めて見る。いつの時代なのか」


 エビちゃんさんでも、わからないことがありますのね。


「少し休もう」

「ですわね。手がかりがあるかもしれませんし」


 鑑定をしつつ、お昼に致します。


 おにぎり、楽しみにしていましたの!


 エビちゃんさんが、シャコガイ型のテントを設置してくださいました。安全地帯として機能するそうでしてよ。


「沈没船の主がその銅貨を発見した直後に沈んだという線は?」


 みんなでおにぎりを食べながら、話し合います。


「ありえない。だとしたら、スケルトンの服装が一致しない理由にならない」


 たしかに。さっき襲ってきたスケルトンは、服装のセンスがバラバラでしたわ。まるで統一性がありません。


 海賊というのは案外、自分たちの所属する一団のスタイルを守ります。一団全体を恐怖の象徴として、アピールできますから。ムダに統一感をなくすと、ただのならずもの集団と認識されてナメられれるのですわ。


 なのに、このスケルトンたちときたら。服装はおろか、船の建造様式さえ違います。木組みだけの船もあれば、鉄を使って強度を増したタイプまでありました。


 こうなると、回答は一つしかありません。


「大昔から、この一帯は危険地帯と認識されていた?」

「ステイサメのいうとおりだ。この付近は、強力な渦が発生するとか、船が神隠しにあうというスポットで有名だったんだ。一度領域に入ったら、二度と出てこられないと」


 だから一度、調査隊を出したほうがいいと、エビちゃんさんの一族は考えてらしたそうですわ。


「我々シャッコー族は、多少の嵐なら自力で帰ってこられる。水中呼吸も容易だからな。だが、いざ調査に乗り出そうとした矢先に」

「ザラタンという魔物が発生した、とおっしゃいますのね?」

「そうなのだ。あの魔物は厄介だ。大きすぎて、誰にも太刀打ちできない。まったく。大型魔獣をかけあわせてさらに巨大な魔物を作り出すなんて。悪魔の所業だ」


 ちゃんさんが、悔しがっています。


「財宝がこんなにあるのに、モンスターたちが守っている感じは特にありませんでしたわ」

「もっと別のものを隠しているのかもしれない。たとえば、ここを立入禁止にすること自体が目的だとか」

「【深きもの】が関連している?」

「かもしれない。深きものから力を得て、さらに強くなろうとしているのかもしれん」


 魔物の習性は、よくわかりませんわ。


「ザラタンも、その強くしてくれる存在を狙って、この海域に潜り込んだと?」

「そうなのかも。または、深きものが自分を守護させるために使役している可能性も高い」


 めんどくさい魔物たちですわね。


 魔物の特質なんて、ブッ飛ばせばワケないですわ。さて鑑定鑑定っと。


「この絵は贋作ですわ。なんの価値も……あら、ちょっとお待ちになって」


 わたくしは、絵の額縁が気になりました。腐った木の額縁を、ポキっといたします。どうせ額縁ですからね。


「おお、これは」


 なんと、額縁に細長い金塊が埋め込んでありましたわ!


「これは、商人の隠し財産だね。税金対策に使っていた手口だよ」


 正直、この額縁の方が価値がありましてよ。


「二重底になっていますのね」


 まだ、この絵には仕掛けがございました。


 これは、写真ですわね。


「……!?」


 わたくしは、写真を見て驚愕いたしました。



 これ、幼い頃のわたくしですわ!

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