第19話 沈没船へ向かいますわ! 

 お夕飯は豪華でしたが、お朝食は控えめになっておりますわ。


 おワカメのお味噌汁と、ライスですわ。焼き魚はブリでしてよ。ワカメは酢の物にも入っていまして、ジャコと一緒にいただきます。


「朝は炭水化物を多めに取るから、おかずは質素なのだ。お気に召さないなら、変えの食事を用意するが」

「いえいえ。おいしいですわぁ」


 エビちゃんさんからの提案がきましたが、わたくしはこの朝食をいただくことにいたします。だって、おいしいんですもの。


「もぐもぐ。これさいこー」


 ステイサメさんも、ブリがたいそう気に入ったようですわね。


「焼いたブリって、こんなにおいしいですのね」


 なんといっても、このライスを巻く海苔のりという物体が、なんとも最高ですわ。


「東洋で作られている、乾燥させた海藻を固めたものだよ」

「今日一番美味しいのは、こちらかもしれません」


 ライスとの相性が、すばらしすぎますわ。


「お弁当にも入れていくから、遠慮せず食べてくれ」

「ありがとうですわ!」


 お城のメイドさんが、おにぎりを作ってくださいました。


「わたくしたちが向かうのは海の底ですが、お弁当を食べるスペースはございますの?」

「キャンプ用の結界を作る。昼食は、海の底を眺めながら取ろう」

「なんという雅なロケーションなんでございましょう! ロマンチックですわーっ!」


 お弁当を持って、いざ沈没船へ参りましょう。


 サメモードとなったステイサメさんの背に乗って、清い海へと潜ってまいります。


 海底の調査ですのに、わたくしは妙にハイテンションですわ。


 海が暗くなっていくに連れて、やはり不気味さが漂ってまいります。それはきっと、陽の光が当たら会からだけではないのでしょう。


「ルカン、さっそく敵だよ」


 また例の、半魚人たちですわね!


「ステイサメさん、【シャークネード】ですわ!」

「わかった!」と、ステイサメさんが人間形態に変化しました。


 いきなり大技をブチかまして、相手の勢いを削ぎます。


 前回は、好きにやらせすぎましたもの。


 ステイサメさんがウインドミルによって起きた竜巻が、半魚人たちを切り刻んでいきます。


 これで、沈没船への道は開けたのでは?


「ルカン、あっちだ」


 船の船首が見えてまいりました。


 哀れ、船首像が頭からボキッと折れていましてよ。健在でしたら、さぞご立派な乙女でしたでしょうに。


「船首に空いた穴から、突入できそうだ」

「では、向かいましょう」


 沈没船の中へと、潜っていきますわ。


 中は暗いです。しかし、明かりの魔法で辺りを照らすことはできます。敵には見つかってしまいますが、どんと来いですの。こちらは、調査のために参りましたから。明るくなければ、話になりませんことよ。


「ガイコツだ!」


 おおっと。スケルトンがお出ましですわ。カタールで武装していまして。


「ていっ」


 こちらは、武器を持っているわたくしがお相手いたします。ステイサメさんが使えそうな武器もありましたら、差し上げたいですわね。いつまでも徒手空拳でしたら、限界もありましょう。


「こっちも片付いたぞ」


 エビちゃんさんも、スケルトン退治に勝利したようですわね。さすがエビパンチですわ。


「やはり、船員の亡霊でしょうか?」

「かもしれない。というか、この船全体が、融合しているぞ」


 そうでなければ、こんなに歪な形にはならないと。


 では、様々な沈没船が、一箇所に集まっているとでも?


「冗談でしょう? そんな怪現象、聞いたことございませんわ」

「でも、事実だ。第一、落ちているコインの年代が違いすぎる」


 二枚のウロコ状の貨幣を片手ずつにつまみ、ちゃんさんはわたくしに見せてきました。


 この世界の貨幣は「鱗貨リンカ」と申しますの。古代魚の鱗を貨幣代わりにしていた名残で、プラチナ・金・銀・銅貨をウロコ状に加工しております。


 たしかに、左手の銅貨より右の金貨のほうが古く、価値がありますわね。

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