第17話 エビの王国ですわ!

 人間さんたちが住む城と城下町を通り過ぎて、我々はエビ族ことシャッコー族の住むオラトリア王国へとやってまいりました。


「ここは、オラトリア王国だ。人の住む街に比べて小さいが、必要な店やギルドなどが密集していて効率的な街並みだろ?」

「ええ。機能的な都市ですわ」


 それに、どこを歩いても美味しそうな香りが漂ってまいります。


「我々は人間の里とは、交易で商売をしている。貴金属類やワカメで作ったポーションや石けんを提供するのだ」


 ワカメのおハーブですのね? 適度なヌメリがあって、トリートメント効果がバッチリなのですって。はやくお湯に浸かりたいですわね。


 また、さっきのように船が襲われたら率先して助けに向かうそうですの。勇敢ですわ!


「先にギルドにでも寄るか? 報酬が必要だろう」


 馬車を降りて最初に、冒険者ギルドに案内してもらいましたの。こちらのシャッコー族さんは身も心もエビになってらっしゃいますわ。言葉が話せるのにはビックリしましたが、どんな発声器官を持っていらして?


「あとは、お宿ですわ」

「宿は、私の寝室を使ってくれ。そこで泊まりなさい」


 お夕飯まで、ご用意してくださるとか。


「ありがとうございます。でも悪いですわ」

「いいのだ。話を聞きたい」

「では、お言葉に甘えて」


 改めて、お城に案内されましたわ。


「お城が、海に半分沈んでいましてよ!」


 ほほお。こんな世界がございましたなんて。


 お城にサンゴや昆布が生えてらしてよ。


 貝殻やヒトデでできた城壁なんて、初めて見ます。


「この城壁は、決してふざけているわけじゃないんだ。このヒトデたちは生きている。普段は城の壁に付着したコケなどを食べて、有事の際はバリアを発生してくれる。我々は、共生しているのだ」

「幻想的でありつつ、実用的な活用法をなされていますのね」

「ぜひ父に会ってくれ。お茶も用意しよう」

「はい。よろしくおねがいしますわ」


 王といえど、堅苦しいのが苦手らしいですわ。直接、お茶の席に案内なさってくださいました。


 海に半分浸かったテラスに、エビの王様がいらっしゃいます。


「ようこそ。我がシャッコー族の王である」

「はじめまして。ルカンですわ」


 王様は、にこやかに応対してくださいました。


 レモンティーと、柑橘系の甘ずっぱいお菓子ををいただきます。


「おいしいですわ。ありがとうございます」

「お気に召したらなによりで。実は、あなたにぜひ、【サメ使い】についてお話をうかがいたいと」


 やはり、そうでしたか。


「呪われたスキルだと、お聞きしました。もしや、あなた方も我々を警戒なさってらして?」

「とんでもない。我々シャッコー族からすれば、サメ使いは英雄だ」


 わたくしは、ステイサメさんにお話を聞きます。


「ホントですの?」

「一応、ホントだよ。呪われたのは、一部の人間なんだ。サメの力を、悪用しようとしたからね」


 なるほど。やはり歴史的遺産は、曲解されて伝わる運命ですのね!


「英雄の再来というめでたい席なのに、あなたに魔物退治をお願いせねばならんとは」

「どうか、なさいましたの?」

「実は、この近隣に沈んだ船の調査をしていたトコロ、悪質な海の魔物が棲み着いてしまってな。名をザラタン。カメとクモとカニの融合したキメラである」

「一体でもクリーチャーとして出てきそうな動物の、てんこ盛りですわね!」


 以前にわたくしとステイサメさんが倒した科学者の一部が、海へ逃げ出して巨大化したそうですわ。


 飼い主の無能さには、呆れ果てますわね。


「ザラタンは深きものを食べて成長し、ついには深きものの知識を手に入れてしまった。今では言葉も話すし、こちらの会話も聞き取れる」


 厄介なクリーチャーですわ。つまり、人間の行動が読めるってことですわね。


「退治にご協力いたします」

「ありがとう。宿も軍資金も提供しよう」

「こちらこそ、ありがとうございますわ。その際、お湯をいただけますか?」

「ああどうぞどうぞ。ワカメのシャンプーを利用してくれ」


 さて、お風呂でワカメおハーブでしてよーっ!

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