第16話 仲間が増えましたわ!

 大量の半魚人が、女型エビボクサーさんを取り囲みます。


「むむ、来るなら来い!」


 エビさんをエサだと思っているのか、半魚人は集中的に攻撃をしにきました。


「【シザーズ・ナックル】! トオーッ!」


 半魚人の顔面を、エビさんはハサミ型グローブで殴り飛ばします。


 ハサミでアッパーを浴びた半魚人が、海へと落下していきました。顔がグシャグシャになっていましたわ。


「シャコのパンチは時速八〇キロ。アッパーパンチで、硬い貝を砕いて中身を食べるんだ」


 ステイサメさんが、解説をしてくれます。


 貝殻すら砕くパンチを浴びせられたら、ひとたまりもありませんわ!


「トオッ、トオーッ!」


 エビのボクサーさんは、半魚人の群れを二つのハサミ型グローブで海へ殴り飛ばしています。


「我々は、乗客の避難を優先いたしましょう」

「そうだね」


 我々は非戦闘員のみなさんを、安全な場所へ隠れさせました。あとは、壁役に徹します。


 本当はものすごく暴れたいのですが、エビさんの邪魔になってしまいますわ。


「【ダブルシザーズ】からの、【流し斬り】!」


 ハサミグローブをショートソードに変形させて、回転斬りを繰り出しました。


「からの、【シザーズアタック】!」


 エビさんが、前転から飛び上がります。そのまま発光して球体となり、海へとだいぶしていきました。


 狙いは、巨大半魚人です。


 八〇キロではきかない速度で、半魚人ボスに体当たりをかましました。


 首まで折れて、デカい半魚人は海へと沈んでいきます。


 ザコ半魚人は、勝ち目なしと逃げていきました。


 あの巨大半魚人を、たった一撃で倒しなさるなんて。


「逃げたか。しかし、また襲ってくるだろう」


 エビのボクサーさんが、手を人間の形に戻します。あれは魔力で強化した、手甲でしたのね。元の手甲は、アーマーリングでした。


 船が港に到着します。


 わたくしたちも、新天地へ降り立ちました。


 ボクサーさんは、カブトも脱ぎます。銀色の髪を一本三つ編みにまとめた、麗しい女性でした。耳の後ろにおヒゲが生えていますから、亜人なのは確かですが。


「旅の方、ご協力に感謝する。私は、シャッコー族のエビハラ。エビちゃんと呼んでくれ」


 カブトを腰に当てて、エビハラさんは頭を垂れます。


「冒険者のルカンですわ。エビちゃんさんとお呼びいたしますわ」

「それでいい」


 ちゃんさんも納得してくださいましたわ。


「ステイサメ。ルカンの召喚獣だよ」

「サメの召喚獣だと? それはいい。二人とも、一緒に来てくれ。我が城に招待したい」


 馬車を用意されて、エビちゃんさんと一緒にお城へ行きます。城下町から城へは、結構な距離があるそうですの。


「私はいわゆる、姫騎士でな。この海を守る一族だ。そこで相談なんだが」

「はい」

「あなた方は、【サメ使い】だな? 私を、二人の仲間に加えてほしいのだ」

「そうですの?」


 サメ使いを認知なさっていて、物怖じもしないとは。やはり、王族ともなると肝が据わっていますのね。


「お城の守りはよろしいので?」

「父から、早く家を出ろとは言われている。まだ海が危険な状態だから、旅はできないと話しているのだが。父としては、それを嫁にいかない口実だと思いこんでいる。このままでは私は、したくもない相手と結婚させられる」

「それは、困りましたわね」


 婚約破棄されたわたくしがいうのも、なんですけど。


「ステイサメさん?」


 わたくしはいいのですが、もうひとりの仲間にも意見を聞かないとです。


「いいんじゃないかな。これから危険な場所へ行くこともある。戦力は多い方がいい。それに、彼女は前衛だ。体格もいい。断る理由はないと思うよ。なにより、彼女はいい人だ」

「よかった。わたくしも、もうひとり仲間が欲しかったところですの。ステイサメさんだけに、負担をかけてしまっていて」


 賑やかになりそうですわ。


「では、このエビハラ、あなた方のパーティに加わらせてもらう」

「よろしくおねがいしますわ」

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