第11話 サメ魔法 【シャーク・ネード】ですわ!

 崖から転落したわたくしを助けたのは、空中で渦を巻くサメたちでした。わたくしが召喚した、サメたちですのよ。


「【サメ魔法】だと!? バカな。サメ使いは使い手が生まれず、歴史から姿を消したはず」

「サメ使いがどのような経緯で絶滅したかは、わたくしにはわかりません。ですが、あなたがたのような不貞な輩が生まれたとき、サメ魔法もまた復活するのだと理解なさい!」


 そうとしか、答えようがありませんわ。乱世になったからこそ、必要とされたとしか。


「あなたがたの悪事は、このサメ使いがすべて食らい付くしまして!」

「おのれサメ使いが! もう一度歴史から消滅させてやる!」


 カニのハサミで、相手がわたくしに斬りかかりましたわ。


「愚かな。【シャークネード】ですわ」


 ですが、わたくしはキャンディケインを軽く振るだけでいいのです。あとは、サメたちが攻撃してくださいますから。


「ごはわ!」


 カニの怪物は、脚や腕をサメに食われてしまいましたわ。


「一連の事件には、シュヴェーヌマンが絡んでしまして?」


 わたくしは、海賊にまつわる情報を聞き出そうとしました。


「へっ。あんなの氷山の一角に過ぎん。この海域を支配しようとしているのは、シュヴェーヌマンだけじゃない。いずれすべての海が、深きものの手に……がはああああ!」


 頭目は、崖の下に落下していきました。サメが骨も残さず食べてくださるでしょう……。


「哀れな方」


 あんな人をいたぶるような生き方しか、できないなんて。


「サメ使いに殺された人間は、死んでも魂をサメに食われ続ける。罪は永遠に消えないんだ」


 食われてはまた再生し、食われることを繰り返すそうですわ。


 あれだけの悪党なら、当然なのでしょう。


「ありがとうございました」


 フーパーさんが、現場に駆けつけました。海賊共も、すべて片付いたとのこと。


 海賊船の中には人質などもいたそうで、全員助け出されたそうです。無事で何よりでしたわ。



 後日、冒険者ギルドから信じられない金額をいただきました。



 海賊の顛末も聞かされましたわ。全員、処刑が決定したそうですの。


 盗みや人殺しなど、かなりの被害があったそうですわ。


 わたくしは、報酬の一部を被害者の方々へ寄付させていただきます。


「ありがとうございます」

「いえいえ。オイスターのお礼に比べれば安いものですわ」


 ご遺族が受けた傷に比べれば。

 

「あと、シュヴェーヌマンが拘束されました」


 わたくしの推理や数々の証拠から、シュヴェーヌマンの容疑が次々とあがったそうです。海路の制圧など、かなり重要な人物だったようですわ。


 これが俗にいう「ざまあ」ですのね? 


 あまり、うれしくはありませんわ。


 血縁者ながら、情けないほうが勝っておりましてよ。


「近々、処刑がされると思います」

「ええ。それがよろしくて」


 牢獄で、反省なさってくださいまし。


「あなたのおかげです。なにかお礼がしたいのですが?」

「では、Dランクをくださいませ」


 そもそも冒険者になろうと思ったのも、海底洞窟の様子を探ることでしたもの。


「はい。わたしの許可がなくても、これだけの功績があれば、ランクは上がりますよ」


 やりましたわ。とうとう海底洞窟の探索へ迎えますわね!


「よかったですわ、ステイサメさん」

「うん」


 聞けば、海底洞窟へ向かうには「無限に水中で呼吸できる」スキルの取得が条件でしてよ。


「そのスキルを獲得できるのが、冒険者ランクD以上なんだって」


 なるほど。では、もともと持っていた我々は、冒険者のランクさえ上げればすぐってわけですわね?


「とはいえ。Cランク以上の冒険者でさえ、逃げ帰ってきました」


 話では、「ランクを上げて強い冒険者に見にいってもらおう」となる手前だそうですわ。


「なりません。我々で調査へ参りますわ」

「でも、危険なダンジョンです。あなた方を失うわけには」

「我々は、負けませんわ」


 わたくしたちの覚悟を見て、フーパーさんも首を振ります。


「あなたたちの決意、しかと受け止めました。いってらっしゃい」

「行ってまいります」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る