第10話 海賊団撃退ですわーっ!

 ギルドで依頼書を確認したわたくしたちは、ひと足お先にアジトへ突撃ですわ!


「ステイサメさん、サメ軍団って、構成できませんの?」

「できるよ。呼び出そうか?」


 泳ぎながら、ステイサメさんがサメに呼びかけてらっしゃいます。


「この海域一帯のサメが、協力してくれるってさ」

「ホントですの? 何でもありですわね!」

「キミがクラーケンを退治してくれたおかげだよ」

「そんな。わたくしは戦っただけですわ」


 トドメはステイサメさんが刺しましたので、実績は彼女のものですわ。


 わたくしは、経験値のみをいただいたまで。人が相手なら、【寄生レベル上げ行為】と言われても仕方ありませんでしてよ。


「ルカンには、いいところがいっぱいあるから」


 どうなのでしょう? 実感がありません。


 アジトがある島に、近づいてきました。


 みなさん、夜も更けて油断してらしてよ!


 高速で襲ってくる一匹のサメに、集中していらっしゃいますわ!


 他の冒険者さんたちも、まさか正面切って堂々とアジトを襲ってくるバカがいるとは思ってらっしゃいませんでしたわね。


 そのスキに、派手に暴れさせていただきましてよ! 


「な、なんだテメエは!?」 

「食べ物の、牡蠣の恨みは恐ろしくてございまして!」


 海賊のお一人を、海へ引き落として差し上げました。


「サメのエサにでもおなりなさい」


 大量に現れた後続のサメたちに、海へ落とされた海賊たちは恐れおののいています。


 ご自分が食われる恐怖を、感じあそばせ。


「あとは知りませんわ。ご自由に」


 海賊の悲鳴を聞きつつ、先へ急ぎます。


 サメたちは、人には向かいません。

 どちらかというと、船にかじりついていますわね。船底に体当たりまでなさって、沈めていますわ。海賊船を破壊するおつもりのようです。退路を断つ作戦なのでしょう。お利口さんですわ。


 わたくしだけでも、海賊団は始末できましてよ。

 さすがこのキャンディケインは、万能ですわ。接近専用の殴打武器のみならず、重火器としても抜群の威力を発揮なさいます。レベルも上がって、格闘用の技も覚えましたのよ。


 相手の剣を払って、胸板にドンッ! ですわ。


 敵の足を払って倒れたところを頭にドンッ! と参ります。


 気絶させるだけにトドメましょう。あとはギルドの方が始末してくださいます。なるべく殺生はあちら様におまかせしますわ。


 ようやく、船の内部へ入りました。中にはパイレーツ帽子をかぶった、いかにも悪そうな太っちょがおりましてよ。


「あとは、あなただけ」

「うるせえガキだな! 眠れやしねえ!」


 海賊の頭目が、わたくしに攻撃を仕掛けてまいりました。


 キャンディケインでお相手のサーベルを弾き返して、ドンッ! です。


「あらあらぁ」


 再生なさいましたわ。肋骨を折るほどの衝撃を与えましたのに。


「コイツは、ダイモーンだ」


 ダイモーンとは、自然界の悪魔と融合した人間だそうですわ。


「オレサマをただの人間と思うなよ。深きものと契約して、最強の力を手に入れたんだ」


 海賊の頭領の顔面が、横へ広がっていきました。目が飛び出て、カニのような頭になりましてよ。


「他人から授かった力など、自らで磨き上げなければ無意味ですわ!」

「しゃらくせえ!」


 ハサミとなった腕で、こちらに斬りかかりましてよ!


「ほっ!」


 わたくしはとっさに、ハサミを受け止めました。さすがに攻撃が重いですわ。受け流したほうがよろしかったかしら?


 連続の側転から、ステイサメさんがカカト蹴りを敵へお見舞いします。


 ですが、固い甲羅に阻まれてダメージが通りませんの。ステイサメさんも、弱い関節部分を捉えたつもりでしょう。


 相手の方が、戦闘慣れしていましたわ。


「ゲヘヘ! 二人共命乞いをすれば、オレサマの愛人として迎えてやるぜ」

「ご冗談を。あなたこそ助けを乞うなら今のうちですわ!」

「ほざけ小娘が!」


 わたくしは小屋の壁を突き破り、対岸に突き飛ばされました。


「そのまま落ちて死……ねえ!?」


 しかし、わたくしは海へ落ちません。


「サメが、宙に浮いてやがる!」

「いつから……サメが陸に上がれないと思いこんでいらしたの?」

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