第8話 クラーケンの幼体をやっつけますわ!
どおりで、冒険者たちが逃げ帰ったと思いましてよ!
やっつける必要がありまして!
「でも、わたくしたちだけで倒せますの?」
「大丈夫、ルカンなら勝てるよ。海坊主よりちょっと強いくらいだから。【サメ使い】は割と強い固定スキルなんだよ」
ここで仕留められるのは、【サメ使い】くらいしかいませんとのことですわ。
この辺は浅く、尖った岩山が多いエリアなんですって。船がつけられない海域な上に、自分も姿を隠しやすいのです。敵さんも、よく考えていらして。
「なんていやらしい。とっちめて差し上げますわ」
わたくしは、キャンディケインを構えますわ。
「クラーケンが、こちらに気づきましたわ」
さあさあ、相手が参りましたわよ。さすがに、反応が早いですわね? こちらへ触手を伸ばしてらっしゃいましたわ。
「あらあら」
ステイサメさんの高速移動により、触手をすり抜けます。
「おおっとぉ」
クラーケンが、動きを早めましたわ。尖った岩に触手を絡みつかせて、勢いでタックルしてまいりましわよ。
「まあ、バカでかいイカですこと」
緑色のイカと、目が合います。
わたくしたちとクラーケンの距離が、近くなりました。太い触手が、我々の眼前に。
「エサになりに来まして?」
ステイサメさんを、わたくしはけしかけます。
大きなアゴで、ステイサメさんは触手に食らいつきました。
触手がなくなり、敵の目があらわになります。
わたくしは、相手の眼球に魔法を打ち込みましてよ。ゼロ距離で。風魔法と水魔法の融合【ウォーターアロー】ですわ。
片目を失ったクラーケンが、ドタバタと暴れだしました。
当たるギリギリをすり抜けながら、再度ウォーターアローをお見舞いいたします。
平民の悪ガキどもと遊んでいて、狩りに関しては心得がありますのよ。お魚の気配を感じ取ってモリで一突き、それと同じですわ。
また、尖った岩を用いてこちらへ近づいて……違いますわね?
「体当たりだ。頭の先端でワタシたちを貫くつもりだ!」
上等ですの。その攻撃をすぐに、後悔させて差し上げますわ。
限界まで引き付けて、わたくしはステイサメさんに真下へ潜るように指示を送ります。
「噛みついて、打ち上げてくださいまし!」
「わかった!」
ステイサメさんが、イカの胴体にかぶりつきました。
水圧に負けないように、わたくしはステイサメさんにしがみつきます。
クラーケンごと、ステイサメさんが海へ飛び出しました。
「そのまま、出っ張った岩に!」
「よし!」
海面から出ている岩に、クラーケンの胴体を叩きつけます。
クラーケンが、岩に突き刺さりました。ピクピクとケイレンしたあと、動かなくなります。
「討伐完了ですわ!」
しかし、どうやって持ち帰りましょう?
「何事ですか!?」
おや、ギルドの受付嬢さんではありませんか。魔法で動く小型船に乗って、こちらに高速で向かってきましてよ。
「住民から、『巨大な影が、海から打ち上がった』と報告を受けました。これはあなた方が?」
「間違いありませんわ」
「これは……クラーケン!?」
巨大なイカの死体を見て、受付嬢さんはギルド職員たちに指示を飛ばしました。小分けにされ、船で回収されていきます。
「ありがとうございました。幼体とはいえ、クラーケンを討伐なさるとは」
後日、受付嬢さんが報酬を精算してくださるそうですわ。
「しかし、クラーケンがどうしてこんな浅い海域に?」
この一帯で、大きい魚はまず採れません。そんな海域に、クラーケンがいるはずもなく。
「やっぱりだ。ルカン。こういったモンスターを放った相手も気になるね」
「ですの?」
「うん。クラーケンがまず現れない海域だから」
ふむふむ。人工的な気配を感じなさるのですわね?
「ここらへん一帯の海域に船を入りづらくして、流通を悪くして得をしている一団がいないかもチェックする必要があるよ」
「探偵みたいですわね?」
なんか、本格的に冒険者っぽくなってまいりましたわ!
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