第5話 登録完了ですわ!

 街を目指して海原を進んでいたのはいいのですが。


「モンスターですわ!」


 ファースト敵が、お出ましになりましたわ。


 わたくしの新たな門出を祝いにきましたのね。


 盛大におもてなしして差し上げましょう。


 人間サイズの、タコとクラゲですわ。


【ウォーターガン】で胴体を撃ち抜き、クラゲはキャンディケインでポカポカ殴ります。


 ですが、クラゲはどいてくれそうにありません


「殴っても、効き目がなさそうですわ!」

「杖に魔力を込めてみて。魔力を直接相手の身体に流し込むんだ」

「やってみますわ。ぬぬぬ」


 杖の湾曲部分に、魔力を流します。


 ステッキの赤い部分が、ポワッと光り出しましたわ。これで殴れば。


「おりゃ!」


 大型のクラゲが、ビクンと跳ねました。アイテムを吐き出し、海へと沈んでいきます。 


「こんな生命体が、海にはいらっしゃるのね」


 わたくしは、敵がドロップしたアイテムを拾いました。


「『深きもの』たちの影響が、まだ残っているんだ。この海の生態系は、かなり歪になっている」


 街に近い海でこれですから、中枢はもっと大変ですわね。


 シュヴェーヌマンのお屋敷があるミグの街には、もう帰れません。

 別にシュヴェーヌマン家は、どうなっても構いませんわ。

 ですが、街がモンスターに襲われていたら大変なことですわね。


「ところで、このアイテムはなんですの?」

「敵は、やっつけるとまれにアイテムを落とすんだ」


 わずかなお金と、ポーションをゲットしましたわ。

 後は、モンスターの素材ですわね。タコの墨と、ビリビリの元となるヒゲです。

 お店に行けば、買い取ってくださるそうな。


「あと、わずかばかり強くなったような」

「レベルが上がったんだね。新しいスキルを覚えたみたいだから、セットできるよ。スキル振りについても、街でレクチャーを受けよう」

「楽しみですわ!」


 モンスターを狩りつつ、オースの街へと向かいました。


 ステイサメさんも、サメから少女の姿になります。


 さっそく、オースの冒険者ギルドへ入りました。


 カフェテラスみたいにオシャレな建物ですわね。


「冒険者登録をさせてくださいな!」

「は、はいどうぞ。水着?」


 受付のお姉さまが、不思議がっています。


 おお、よく考えたら水着のままでしたわ。【ヤドカリ】のスキルで、露出を抑えます。


 用紙を受付さんからもらって、記入しようよしました。


「職業欄に【海賊】がありますわっ!」


 こんな項目がありますのね?


「あるよ。【シーフ】があるからね。【トレジャーハンター】の海版、って扱いなんだ」


 なるほど、盗賊シーフや【ローグ】……つまり暗殺業もありますものね。


「悪いことをする人は、【クリミナル】……犯罪者っていう名前で統一されますので」

「わかりましたわ」


 受付さんから、レクチャーを受けます。


「盗賊業なので、【海女】でごまかそうとも思いましたのに」


 こっそり悪事を働くって、興奮するでしょ?


「そうそう、悪いことなんてできないよ。特にキミみたいな優しい人なら」

「ですかしら?」


 悪知恵は働きましてよ?


「登録が済んだら、装備以外のお洋服を街で買おう」

「ですわね。部屋着などのお召し物は大切ですわ」


 雑談しながら、登録用紙に必要事項をスラスラ。


「できましたわ!」

「確認します。ルカンさんで登録なさるのですね? 職業は海賊と」

「よろしくお願いしますわ」


 わたくしのスキル、【サメ使い】は伏せてありますわ。ヘタに持っていると知られたら、困りましてよ。


「大丈夫。『Z級スキル』はこの世界に存在しないことになっているから、ギルドも認識できない。自分だけにしかわからないよ」


 ならば、よろしいですわ! 


「ステータスポイントやスキルポイントの割り振りなどをご説明しますが、よろしいでしょうか?」

「もちろん」


 わたくしが選択できるスキルを指導してもらいます。

【サメ使い】以外で。

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