第3話 Z級スキルの秘密ですわ!

「はいお水」

「ありがとうございます」


 お水、ありましたわ……。


 見つけてくださったどころか、ここはステイサメさんのホームだそうで。湧き水がありましたわ。


 とびっきりの海鮮までいただいて、まさに極楽ですの。


 串に刺したアジなんて、おいしいを通り越してうれしいですわ。


「これが最高なのは、もうわかっていましたわ」


 塩を振っただけのアジが、こんなにも濃厚だなんて。


「エビ。このエビは最強ですわー」


 プリプリの炙ったエビを、パクリと致します。ああもう、甲羅ごといけますわーっ! わたくし、甲羅なんてめったに食べませんの。でも、このエビは「すべて食べつくしてしまいたい」と思わせる味わいでした。感激ですわーっ!


「重ね重ね、ありがとうございます。ステイサメさん」


 火を囲みながら、わたくしはステイサメさんに頭を下げました。


「いえいえ。こっちこそ、海坊主退治に協力してくれて、ありがとう」

「そうですわ。ところでどうして、あんな化け物が海に現れたんですの?」

「それを語るには、まずあなたのZ級なるスキルの正体を知る必要がある」


 えらく神妙な面持ちで、ステイサメさんが場を温めますわ。雰囲気が出てきます。


「『サメ使い』というスキルは、大昔の非モテ男性が『せめて海産物でハッスルしよう!』と編み出した、その……性奴隷用のスキルなんだ」

「なんですってぇ!?」


 まあ! 大昔の殿方は、そこまで女性と致したかったのですわねぇ! いつの時代でも、殿方はドスケベェですわーっ!


 そんなクッソみたいな理由で、このスキルが生まれましたの!?


 サメさんは、竹夫人ではありませんのよー!


「ただ、その後が問題だった。デキてしまったんだ」

「サメとの間に?」

「うん」


 なんとまあ。とんだ生命の神秘ですこと。


「でね、父親の方が認知しなかったんだよ。その子孫たちは『深き者』を名乗って、自分たちを貶めた世界を破壊しようとしたんだ」


 海底に都市を築き、住み始めたそうですの。


 その勢力は拡大する一方で、世界はこのまま破滅を迎えるばかりだったそうですわ。


「後に、サメ人間の中にいた勇者が、彼らを撃退したんだよ」


 敗北したサメ人間たちは、海底都市ごと封印されたそうですわ。


「あなたがさっき倒した海坊主は、その末裔だよ。あるいは、彼らが作った生体兵器だって言われている」

「すると、まだあんな化け物が海に潜んでいる可能性もあるわけですわね?」

「それを調査中に、キミと出会ったんだ。ルカン」


 そうでしたのね!


「あなたがどうして、サメ使いなんてスキルを持っているのかは、わからない。心当たりはある?」

「ありませんわ。本当の両親なら、なにかご存知だったかも知れませんが」


 わたくしの真の両親は、乗っていた貿易船が沈んで亡くなってしまいましたの。


「ごめんなさい。哀しいことを思い出させてしまって」

「いいんですのよ。」


 それでわたしは、シュヴェーヌマンの元へ引き取られましたの。ほとんどレディのお稽古は受けず、海や川で遊んだり釣りなどをしていましたわ。


「ファンキーな生き方をしていたんだね?」

「だって退屈ですもの。妹はよくできた子でしたけれど、わたくしは雑ながらテキパキなんでもやりましたから」


 貴族の雑務は、たいていわたくしの仕事でしたの。けれどわたくしは遊びたかったから、パパッと終わらせて外へ出ていましたわ。


 あー今頃、業務がこなせずにアップアップなさっているところでしょうね! いい気味ですわ! 数学ができるのは、わたくししかいませんでしたから! 


「キミは全然、悲壮感がないんだね?」


 ステイサメさんが、クスクスと笑い出しましたわ。



「ですわ。もうわたくしはルクレツィアではありません。冒険者ルカンですわ!」

「冒険者として生きるの?」

「ええ。この海で起きている異変を探らねば!」


 わたくしは、立ち上がりました。


「そのために、街へ向かいますわ」


 冒険者登録もですが、スキルのことも、装備や食料も見直さなければなりません。

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