第35話

「教授の過去を知りたいんです!」

修治がそう叫び、恭介の拳がギリギリで止まる。

「何だって?」

恭介はそう呟くと、修治の胸ぐらを掴んでいた手を離して俯いた。

「教授と空さん、何かあるんでしょう?俺達、明日には人間界に帰るわけだし。こんなわだかまりが残ったまま帰るの、嫌なんです」

そう叫んだ修治に、恭介は溜め息を吐いた。

そして風太の顔を見ると

「此処では……」

と呟くと

「大丈夫だぞ。恭介、オイラの父ちゃんなんだろう?」

と、風太が笑顔で答えた。

「風太!お前……」

驚いた顔をする恭介に

「空から聞いた。恭介が、オイラと一緒に暮らしたいって言ってくれているのも」

そう言って微笑む。

恭介がそっと風太の目線の高さに座り、肩に両手を乗せて

「それで、風太はどうしたい?」

と聞くと、風太は笑顔のまま

「オイラは此処に残る。空と座敷童子を残して、オイラだけ人間界には行けねぇ」

そう返事をした。

「風太…」

恭介が悲しそうに呟くと

「どっちにしても、オイラが此処で暮らせるのもあと2年なんだ」

そう言って風太は真っ直ぐ恭介を見つめると

「風の子は、風の里で暮らさなくちゃならねぇ掟があるんだ。本当なら、オイラはとっくに風の里に居なくちゃならないんだ。でも、空と婆ちゃん……大龍神様が、7つまでオイラを此処で育てさせてくれるように頼んでくれたんだ」

そう言って微笑んだ。

「だから、恭介と一緒に人間界に行っても、オイラは直ぐに風の里に連れ戻されちまう」

風太の言葉に、恭介は力無く項垂れる。

「でも、嬉しかったぞ。恭介が父ちゃんなのも。オイラと一緒に暮らしたいって言ってくれたのも」

笑顔でそう話す風太を抱き締めて

「そうか……。結局、風太も奪われてしまうんだな」

と、力無く呟く恭介に

「あの……教えて下さい。教授は此処で……何をしていたんですか?何故、風太君達と引き離されたんですか?」

美咲がそう叫んだ。

恭介はゆっくりと美咲を見ると

「楽しい話では無いぞ」

そう言って、恭介はゆっくりと話し始めた。

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