第34話 引き裂かれた運命

「え~ではこれから、第一回恭介と空をくっ付ける作戦会議を行いたいと思います」

いつもの秘密の場所で、風太がチップスターの空き箱をマイク代わりにそう話し出した。


 あの後、帰りが遅い美咲達を心配した風太に美咲が泣いているのが見つかり、修治が泣かせたと思われて足に何発も風太に容赦なく蹴られたのだ。

そんな風太に慌てて美咲が事情を説明すると、何故か朝食後にいつも修治と風太達が集まる場所に集合させられたのだ。

「ねぇ……風太君って、時々オヤジ臭くない?」

「そうそう!ジャンケンとか、謎の言葉言うんだぜ」

コソコソ話す美咲達に

「そこ!私語を謹んで!」

風太がそういって、偉そうにしている。

「わぁ~……講義中の双葉教授みたい」

思わず修治が呟くと、風太が得意げに笑う。

「わぁ~!可愛くない」

「え!可愛いじゃない。ねぇ、風太君」

美咲が微笑むと

「集まって会議をするときは、こういう風にするんだって裏山の狸ジジイが教えてくれたんだ」

そう言って、鼻の下を指で擦って風太が笑う。

「あの~風太ちゃん」

修治が手を挙げると

「なんでしょう。修治君」

と風太が答える。

「その裏山の狸ジジイというのは?」

修治の質問に、風太は咳払いをすると

「人間界の最先端を知ってるジジイなんだ」

と言って踏ん反りかえる。

「えっと……じゃあ、あの変なジャンケンも?」

「裏山の狸ジジイから教わったんだ。ナウなヤングはみんな使ってるらしい」

得意気に言った風太に、美咲と修治が顔を見合わせて吹き出した。

「え!何だよ!」

慌てる風太に

「風太ちゃん、それ騙されてるよ。今時、ナウなヤングって…」

そう言ってお腹を抱えて笑っている修治を見て、風太は泣きそうな顔をして美咲を見た。

美咲が必死に笑いを堪えて

「うん。今時、そんな言葉は聞いた事無いかな」

と答えると、風太は顔を真っ赤にして

「あのクソジジイ!」

と叫んだ。

「まぁまぁ、それより話し合いするんでしょう?」

美咲が慌てて話を逸らすと、風太は気を取り直して

「そうだった!」

と微笑んだ。

「それにしても……修治。あんた、此処で風太君達に何を食べさせてるわけ?」

美咲は山積みになっているお菓子を見て溜息を吐いた。

「これは!俺の荷物にあったお菓子を風太ちゃん達に見つかって…」

「で、教授や空さんに見つかったら怒られるからって、此処でこっそり食べてたわけ?」

呆れた顔をする美咲に、修治が苦笑いしていた瞬間

「お前ら、こんな所で何してるんだ?」

恭介が顔を出した。

「ぎゃ~!」

驚いた4人が悲鳴を上げると、恭介はうるさいとばかりに顔を歪めて

「何をコソコソと悪巧みしてるんだ?」

と、呆れた顔で言われてしまう。

「恭介、お前に秘密の内緒話なんだ。だからお前はあっちに行っててくれ!」

無邪気な風太の言葉に、美咲と修治が頭を抱える。

恭介は笑顔を浮かべて風太の頭を撫でると

「そうか…。俺に秘密の内緒話か…」

と言ってから、美咲達を睨んで

「どんな楽しい話なんだろうな?」

そう言って、黒い笑顔を浮かべた。

そして指を鳴らしながら

「事と次第によっては…覚悟出来てるよな。片桐」

と言われて、修治が

「なんで俺だけ?」

と叫んだ。

「さすがに女の子は殴れないだろう?ほら、今ならまだ許してやる。正直に吐くんだな」

怒った顔で近付く恭介に、修治は笑顔を浮かべて

「教授、落ち着いて!……美咲、助けろよ!」

必死に美咲に助けを求めると、十字架を描いて両手を胸の前で合わせると

「修治、尊い犠牲になってくれてありがとう」

と呟いた。

「ええ!そんな!」

修治がそう叫んだ時、恭介に胸ぐらを掴まれて拳を振り上げられた。

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