第12話

そんな事を言い合っていると、空が上空を見上げて

「急がないと……嵐が来ますね」

と呟いた。

そんな空に美咲は吹き出して

「え?こんな晴天なのにですか?」

そう言って笑い出した。

すると恭介も上空を見上げ

「山の天気は変わりやすいからな。……本当だ。急がないと、嵐になりそうだな」

と続けた。

「え!そうなんですか?」

恭介の言葉に驚く美咲の手を風太は掴むと

「大丈夫だよ。オイラの家に案内するから、着いて来いよ!」

と言って微笑んだ。

美咲はやけに不安が広がる胸を押さえ、その気持ちを吹き払うように笑顔を作り

「ありがとう、風太君。じゃあ、お願い出来る?」

そう言って、笑顔で頷く風太と風太の家へと歩き出す。

それでも不安でチラリと恭介を見ると、修治と話しながら歩いていた。

恭介が空の傍に居ないのを確認してホッとすると、風太達の住む家へと、風太と繋いだ手を大きく振りながら歩いた。

一方、空は風太と楽しそうに歩く美咲を見つめて溜め息を吐く。

恭介に好意を寄せている彼女を、空も又、不安そうに見つめていた。

しかし、そんな自分の気持ちを振り切るかのように首を振って、再びゆっくりと雨雲に覆われ始めた空を見上げた。

そして祈るように手を握り締め、必ずこの3人を、大龍神に見付からずに人間界へと帰さなければ……と心に誓うのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る