第10話

「もう、教授ったら照れちゃって…」

美咲が恭介の腕に絡み付くと、恭介はその度に美咲の身体を引き剥がす。

その様子を興味深々で見ていた風太は、修治の腕から逃れると

「教授〜」

と言いながら、座敷童子に抱き着く。

すると座敷童子が風太を剥がし、再び抱き着くという美咲の真似を無邪気にしている。

すると恭介は美咲を睨み

「ほら、見てみなさい!きみがそういう事をするから、子供が真似するじゃないですか!」

と怒る。

美咲がしゅんとして

「だって……」

と呟くと、恭介が再び睨む。

そんな二人を見て、風太が

「あ!忘れてた!お前らを見つけた事を空に伝えなくちゃ!」

と思い出したように叫んだ。

座敷童子も慌てて頷くと、風太が指笛を鳴らす。

すると風が唸り、突風が吹き抜けた。

「きゃ〜!」

驚いてスカートを押さえて美咲が悲鳴を上げると、目の前に空が現れた。

「空、見つけたよ!」

風太と座敷童子が空に駆け寄ると、空は風太の頭を撫でて

「ありがとう、風太。座敷童子。」

と、頭を撫でている。

「え!あの人、何処から来たの?」

美咲が驚いて叫ぶと、空が3人の顔を見て顔を硬らせた。

「あなた……」

恭介を見て固まる空に、恭介が空の顔を見て不思議そうな顔をする。

美咲は2人の顔を見て、慌てて恭介の腕を引っ張り

「教授、そろそろ帰りましょう」

と呟いた。

「あぁ……そうだな。しかし、帰れないんだよ」

そう呟いた恭介に

「え!」

っと、美咲や修治が反応する前に空が驚いた反応をした。

「あ……すみません。実は帰ろうとして、何度も帰り道に向かっているのに此処に戻ってしまうんですよ」

恭介が恐縮して話すと、空が頭を抱えて

「いつもより早く……出発なされたのかもしない」

そう呟いて、その場に座り込んでしまった。

「あの……大丈夫ですか?」

あまりの取り乱し方に空を心配して背中に触れようとした恭介の手を遮り、美咲が

「あの、大丈夫ですか?」

と言いながら空の背中に触れる。

「あ……すみません、取り乱したりして」

慌てて美咲を見上げた空に、美咲は胸騒ぎがした。

年齢は20代後半くらいで、見た感じは可もなく不可もない平凡な顔立ちをしているが、彼女が纏う空気が普通の人では無いと肌で感じた。

ザワザワとする胸騒ぎを隠し、美咲は笑顔を浮かべる。

空はそんな美咲に微笑み返し、ゆっくりと立ち上がった。

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