第9話

森の中を歩いていた美咲と修治は、中々恭介と出会えずに居た。

美咲は切り株に座り

「修治〜、疲れた」

そう言うと溜め息を吐く。

折角、お洒落をして来たのに、結局、恭介と離れてしまった。

どうしていつもこうなんだろう……と、美咲が溜め息を吐いていると

「あ!居た居た!」

と、背後から声がした。

美咲と修治が振り向くと、自分達の存在がバレていないと思っているらしく、風太と座敷童子が無遠慮に2人の顔をガン見している。

「座敷童子、あいつ等変な格好してるぜ」

風太は興味深々の顔で2人を見て

「男の方、頭悪そうな顔してないか?」

風太がそう言うと、座敷童子と2人で笑ってる。

美咲は2人の前に立ちはだかると

「ちょっと!確かに修治は頭悪そうだけど、そう言うのは聞こえるように言っちゃダメでしょう!」

と言って怒った顔をした。

すると2人は驚いた顔をして

「お前等、オイラ達が見えるのか?」

って聞かれた。

美咲は呆れた顔をして

「当たり前でしょう!何?それともきみ達は幽霊なわけ?」

と続けた。

すると2人は顔を見合わせて

「益々ヤバいぞ!早く空に知らせないと!」

そう言って走り去ろうとした。

美咲は慌てて2人の腕を掴み

「ちょっと待ちなさい!あなた達、こんな山奥に子供だけで来たら危ないでしょう!」

と叫んだ。

風太と座敷童子は美咲に捕まると

「離せ!ここはオイラ達の縄張りなんだからな!お前等が勝手に入って来たんだぞ!」

そう叫んで、美咲の手に風太が噛み付いた。

「痛い!」

美咲が手を離した瞬間

「ば〜か!ば〜か!」

って言いながらお尻を叩いてあかんべをした。

その様子に怒って

「馬鹿にして!」

と言って追いかけようとした瞬間、恭介が現れて逃げようとした風太の身体を抱き上げた。

「藤野君、きみ達は子供相手に何してるんですか!」

と言われて、美咲が笑顔を浮かべる。

「教授!もしかして、私達が心配で戻って来てくれたんですか?」

「いや、帰ろうとしたら此処に戻ってしまうんだよ」

美咲の言葉に間髪入れずに答えた恭介に、美咲はうふふって微笑むと

「又々、照れちゃって。本当は美咲達が心配で戻って来てくれたんですよね」

と言って抱き着いた。

片手に風太を抱いているので、美咲を引き剥がせずにいる恭介は

「片桐君!藤野君をなんとかしてくれ!」

そう叫んだ。

すると修治は両手を頭の後で組んで

「え〜!美咲、邪魔したら怒るし〜」

と言って、知らん顔している。

「分かった!離してくれたら、次の課題を免除してやる」

これ幸いと抱き着いて離れない美咲に困って恭介が叫ぶと

「マジ!それ、約束っすよ!」

と言うと、恭介が抱いている風太の身体を恭介から預かった。

恭介は両手が空くと、直ぐに美咲を引き剥がす。

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