第178話 最強VS最強


「「むんっ!」」


 バルバロッサさんの青龍刀と、偽バルバロッサさん……いやボラスス教皇の同じく青龍刀がぶつかり合う。


 なんと信じられないことに、互いにまったく譲らずにつばぜり合いを行っている……!? すごく最悪なことに、ボラスス教皇もポシェットをつけている。


 つまり武器を無尽蔵に取り出せるわけで……。


「なんというすさまじい身体だ! この力があれば……本当に私がこの世界の神となれる!」

「吾輩の身体で好き勝手はさせぬのである! 成敗してくれよう!」


 ボラスス教皇はバルバロッサさんの身体を得たことで、歓喜の声をあげはじめた。なんて厄介なんだ! これならボラスス神がそのまま復活してくれた方が百倍くらいマシだったぞ!?


 よりにもよってバルバロッサさんの身体のコピーとかチートだろうが!?


「「はあっ!」」


 二人の剣がぶつかりあって地下室が大きく揺れて行く……! これ下手しなくても戦いの余波で崩れるぞ!? 


「リーズ、エミリ様、セレナ! ここは吾輩に任せて去るのである!」


 バルバロッサさんも危険を察知して、教皇と戦いながら俺達に逃げるように言ってきた。


 生き埋めになったら俺達は死んでしまう! バルバロッサさんはこんなのでは死なないはずだ!


「エミリさん、セレナさん! ここから逃げますよ!」

「は、はいっ!」

「わかりました!」


 俺達は急いで来た道を戻り始めた。とはいえこんなの走っても間に合わないので、【クラフト】魔法で作った自動車に乗ってだ!


 グラグラと揺れる中、地下通路を爆走して階段を上って、粉砕された鉄の扉つまりは地上まで戻ることができた。


 その瞬間だった。バルバロッサさんと教皇が地面から飛び出してきた!?


「貴様! 吾輩の身体を持ちながら逃げるとは何事か!」


 バルバロッサさんが激怒しながら叫ぶ。どうやら教皇が地上に上がってきて、バルバロッサさんはそれを追ってきたようだ。


 サラッとおかしなことをしている気がするが、バルバロッサさんならば普通にやりかねない。だけど何で教皇は地上に出てきたんだ? そのまま地下で戦ってもよかったのでは……。


「くくく。リーズよ、私が地上に出た理由を教えてやろう。この戦いに勝つためだぁっ!」


 教皇はポシェットからバリスタを取り出して矢をつがえた。狙いはバルバロッサさん……ではなく、矢を空へと向けた。その矢じりの先端が捉えているのは……飛行船だった。


「死ね、憎き女王め!」

「させるかっ!」


 教皇は矢を引き絞って発射する。それと同時に俺は【クラフト】魔法を発動して、奴の射線上に全長5mはある巨大な鉄塊を出現させる。


 矢は鉄塊に激突して内部を抉ったが、かろうじて貫通はしなかったようで塊の中で止まったようだ。巨大な鉄の塊が地面に落ちて凄い音を響かせる。


「ちいっ! あと少しで殺せたものを!」


 憤る教皇。あ、あぶねぇ!? なんだよあれチートだろ!?


 飛行船を弓矢で落とそうとするんじゃない! 少しでも隙を与えたらまた狙われかねないぞ!?


「バルバロッサさん! 奴に隙を与えたらヤバイです!」

「分かっているのである! 我が丸太を受けよっ!」


 バルバロッサさんはポシェットから丸太を取り出して、教皇へと襲い掛かっていく。だが教皇も同じく丸太で応戦し始めた。


 一打ぶつかるごとに地面が揺れ、空気が轟き、耳が割れるような音が鳴り響く!


「ど、どうしますこれ!? 叔母様も飛行船を地上に降ろすようですし!」


 エミリさんがこの天上の戦いを見て、ものすごく動揺しながら叫ぶ。彼女の言う通りで飛行船は高度を落としている。アミルダがこの状況を察して、撃墜される前に着陸するのだろう。

 

 空にぷかぷか浮いていたら格好の的だから、彼女の判断は間違ってはいない。それにこの戦いの衝撃波が飛行船まで届いて、気球部分が断裂する恐れだってある。


 だが問題は……地上にいても言うほど安全ではないということだ。


「「おおおおおお!」」


 二人のすさまじい丸太技の応酬は続いていた。


 さっきからその余波が俺たちに襲い掛かり、足に力をいれていないと吹き飛ばされそうなんだが!? 


「リーズさん!? これ私たち逃げた方がいいんじゃないですか!? 巻き添えになりますよ!?」

 

 エミリさんがガチの悲鳴をあげている。俺もすごくそう思う。


「そうですよね。ここは逃げ……」

「ならぬのである! 教皇はお主らを狙っている! 下手に離れたら守り切れぬ!」

「チッ……」


 バルバロッサさんが教皇と打ち合いながら叫び、教皇が少し舌打ちをした。


 教皇め、隙あらば俺達を狙うつもりか……! しかしこれはバルバロッサさんが少し不利な気がするな……。ボラスス教皇は何かを守る必要がないが、対してバルバロッサさんは俺達を守りながらの戦いだ。


 ここは足を引っ張るのではなくて、援護したいところだが……あの戦いに下手に割って入っても、巻き添えを食らって死ぬだけだ。


 どうするか……いや迷うまでもないな。俺は今までどう戦って来たかを思い出せ。敵と味方の戦力が異常過ぎるだけで、今回もそれをやればいいだけだ。


「エミリさん、セレナさん。手伝ってください……バルバロッサさんを強化して、今よりも遥かに強くしたいので」

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