第176話 地下へ
「むぅ! あそこから悪しき気配を感じるのである!」
バルバロッサは散々総本山を蹂躙し、壁や建物などを壊した後。とうとう発見したボラスス神殿をにらみつけた。
「ま、まずいぞ! 魔王が神殿に目をつけた!?」
「と、扉を守れぇ! 何としても奴を中にいれるなぁ!」
ボラスス教の敬虔なる信者たちは、己を盾にするかのように教会の門の前へと集まっていく。彼らは魔王を前にして集団パニックに陥っていた。
もし彼らが平常心ならば気づいただろう。
「破ぁっ!」
バルバロッサに対して門も壁も等しく、ただぶち破るだけのものであることに。
青龍刀を振るった風圧によって、神殿の壁が瞬時に崩壊して大穴があく。バルバロッサはその穴から神殿へと侵入していった。
信者たちは必死にバルバロッサを追いかけていく。
「あ、ああっ!? 敵が神殿の中へ!? きょ、教皇様が危ない!?」
「だ、だ、だ、大丈夫だ! あのお方は地下にいる! そして地下に進むには厚さ2mを誇る鉄の門があるんだ! いかに化け物と言えども流石に破れん!」
地下へ続く門はボラスス神の鉄腕と呼ばれて、異教徒を絶対に通さないものだ。その重量から人の力で開くことは叶わず、魔法の呪文によって開けるしかない。
ボラスス総本山の最下層。神の領域を守るに相応しいまさに鉄壁の門だ。
バルバロッサはその門の前にたどり着くと立ち止まる。
「む? この中から悪しき気配を感じるのである!」
「はぁ……はぁ……! ど、どうだぁ……その門はいかに魔王でも破れまい……はぁはぁ……」
「も、もう走れねぇ……」
「なんで全身に鎧を着てくそでかい剣持って、あんなずっと爆走してられるんだよ……」
信者たちの大半は追い付けずに脱落していた。なおバルバロッサは特に後ろなど気にしてもおらず、疲れぬように体力を温存して走っている。
バルバロッサは鉄の扉を少し観察した後に、青龍刀をチラリと見た。
「ふむ。この壁となるとこのお気に入りの剣が欠けてしまう恐れがある。しからば……」
バルバロッサは腰に付けたポシェット――リーズ謹製のアイテムボックス――に手を突っ込んで、ゴソゴソと何かを探している。
そして長さ4mを超えるほどの巨大な木を取り出した! 信者たちはいきなりの大木の出現にひたすら困惑している。
「へ……? 木? どっから出した!? それに木なんて取り出して何を……」
バルバロッサは木を上に掲げると、プロペラでも回すかのように回転させ始める。竜巻が巻き起こって、周囲の壁や家具などがその風圧で吹き飛んでいく! あっという間に壁も何もかも飛んでいき部屋は野外へと変貌した!
「ああああぁぁぁぁぁぁぁ!?」
ついでにボラスス信者の大半も一緒に上空へと舞い上がった! ついてこれずに少し離れた場所を歩いていた信者たちが、野外となった場所を見て唖然としている!
そんな中でひとり、バルバロッサは鉄の扉を睨んでいた。
「この木はリーズによって強化され、鉄の強度を誇る杭である! そして我が愛武器から放たれる渾身の一撃、たかが邪教の壁に防げるほど甘くは……ないっ!」
バルバロッサは大木を金棒のように振り上げると、巨大な鉄の扉に対して渾身の力でぶっ叩いた!
巨大な鉄の扉はその破壊力に耐えられずに砕けて、木っ端みじんになってしまった!
大木こそがバルバロッサのもっとも慣れ親しんだ武器! その武器の弱点であった強度を補強すればまさに鬼に金棒! バルバロッサに大木! 青龍刀は扱いやすい武器ではあれど、バルバロッサが最近使い始めた武器でしかない!
「う、嘘だろ……!? ボラスス神の腕が……」
「ま、魔王だ……! 魔王が神を滅ぼしに来たんだ!? み、みんな! ボラスス神をお守りせよ! なんとしてもあの魔王を先に行かせるな!」
「黙るのである!」
バルバロッサが信者たちに向けて大木を一振り。すると烈風が吹き荒れて信者たちはひとりのこらず吹き飛んでいった。もはやウチワで塵でも飛ばすがごとくだ。
「さて狼煙を上げるのである!」
バルバロッサはポシェットから花火を取り出すと、指を鳴らすことで火花を出して点火した。空へと打ち上げ花火が発射されて、パァンと大きな音が鳴り響く。
すると空を漂っていた飛行船がバルバロッサの頭上にやってきて、更に空からリーズとエミリとセレナが降ってきた。
「手はず通りであるな! むんっ!」
バルバロッサは再び大木でプロペラ回転を行う。今度は上空に対して風が吹き荒れて、リーズたちの落下の勢いががどんどん殺されていく。そしてゆーっくりと彼らは降りてきてあっさりと着地した。
「バルバロッサさん露払いお疲れ様です。ここが奴らの……」
「うむ! 悪しき気配を感じたのである!」
「私が侵入した時も教皇はここの中にいました! ……あれ? でもすごく丈夫な鉄の扉がありませんでした? 開くための呪文を調べておいたのですが」
「邪魔だったので壊したのである!」
「ええ……」
エミリがバルバロッサに困惑の目を浮かべる。
「細かいことはよいのである! それよりも最終決戦である! 今こそ悪の親玉を粉砕して平和をもたらすのである!」
「攻め方だけ見ると私たちの方がよっぽど悪者な気が……」
「エミリさん、しっ!」
彼らは地下へと侵入していく。それを後ろから観察する影があった。
「ま、まずいんだな……! このままだと教皇が殺されちゃうんだな……ボキュが何とかしないと……!」
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過剰戦力過ぎませんかね?
なおスカイダイビングに関しては、リーズが地上をゴムマットにしたりとか、何なら周囲を無重力にしたりもできました。
バルバロッサだけで事足りたので何もしませんでしたが。
リーズたちが降りた理由は、バルバロッサは魔法などが使えないためです。教皇が変なことしてきた時に、リーズたちがいた方が色々できて対応しやすいので。
アミルダは……地下の炎魔法ってあまり使い道ないので……。
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