第172話 ボルボルの大暴れ


「ありゃりゃ、失敗しちゃったんだな。でもボキュだってミスはあるんだな」


 ボルボルは結局全てのS級ポーションの樽をぶちまけてしまった。仕方がないので部屋から出ていく。


 少し歩いていると当然ながら、廊下で教徒たちとすれ違うが彼らはスルーした。そして少ししてから口々に話していた。


「ぼ、ボルボル様だ……」

「お、おい。話したらダメだぞ。普通の教徒は接触したらダメって教皇様から厳命されてるだろ。迂闊に話すと病気になるって」

「俺は話題に出すだけで肌が爛れるって聞いたぞ。それよりS級ポーションを取りに行かないと。更に強力なアンデッドラゴンを作る魔法を使うらしいし」


 ボラスス教皇は教徒たち全員に対して、ボルボルとの接触を禁止していた。ボルボルを完全に隔離するための策だったが、そのせいで彼が脱走しても誰も報告しない。


「むむっ! ボキュの勘によるとこっちの方が匂うんだな!」


 ボルボルは廊下を勘で進んで、地下牢のとある部屋へとやってきた。そこに入ると……アッシュが檻の中に閉じ込められていた。


「!? や、やべっ!? うつる!?」


 看守だった兵士はボルボルを見て途端に部屋から逃げて行く。教皇の厳命は絶対だった。


「あ、アッシュ様!? どうしたんだな!?」

「…………」


 ボルボルは檻の柵にしがみついて叫ぶが、アッシュは身動き一つ取らない。目は見開いて身体は力なく倒れて、誰がどう見ても異常な光景だ。


 それを見てボルボルはしばらく考え込んだ後。


「ボキュに任せるんだな! 木筒にいれたS級ポーションがあるからかけてあげるんだな!」


 ボルボルは木筒を檻の柵から通して、アッシュに手渡そうとする。だがアッシュは動かない。


「アッシュ様が動かないんだな。この檻に入れられてたらダメなんだな!」


業を煮やしたボルボルは木筒を振り回して、S級ポーションをアッシュにかけようとする。だがうまく飛ばせずに僅かに水滴がアッシュにかかっただけだった。


「だ、ダメなんだな……鍵も見当たらないんだな。諦めるんだな。でも何でアッシュ様が檻に?」


 ボルボルはしばらく悩んだ後に焦り始めた。


「も、もしかして教皇が裏切ったんだな!? もしそうならボキュの敵はボラススで、ハーベスタ国が味方……!?」


 ボルボルの敵がボラススになりそうだった瞬間だった。


「ハーベスタ……バベル……仇……けど……ボラスス……敵……」


 アッシュが身体を動かさずにただ呟いた。


 それを聞いてボルボルは大きく頷く。


「そうなんだな! バベルの仇であるハーベスタは敵なんだな! ボキュに任せるんだな! ハーベスタを絶対に負けさせるんだな!」


 ボルボルは木筒を懐にしまうと勢いよく部屋を出て行く。


「待っ……ハーベスタ……力を貸し……」

 

 アッシュの呼び止める声が一切耳に届かなかった。そしてボルボルと入れ替わるように教徒が入って来る。


「やっとお前の役目が来たぞ。教皇の御言葉を信徒たちに届けるのだ。と言ってもお前はもう自分の意思では一言も喋れないけどな」







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 俺達を乗せた飛行船はボラススに向けて進んでいく。


 先ほどボラススの大軍を蹴散らしたので、もう妨害できるような戦力はないようだ。地上は常にS級ポーションの雨を降らしているので、地中からアンデッドが不意打ちしてくる恐れもない。


「叔母様。このまま王都に進軍して、空から攻撃して勝ちじゃないですか?」

「順当に行けばな。この飛行船はあまりに強すぎるからな、本来ならばだが」


 アミルダはすこし怪訝な顔をして、ボラススの方向を見続けている。


「先ほどアンデッドのドラゴンを出してきたが、本当にあれで打ち止めなのか? あの老獪な教皇のことだ、油断させておいて不意打ちは普通にあり得る」

「確かにでありますな。敵の油断をつくのは兵法の基本である!」


 俺も思わずハッとする。


 確かにアミルダの言う通り、俺は完全に油断していた。もうアンデッドラゴンは打ち止めだろうと高をくくっていたのだ。


 この飛行船は耐久が弱いのもあって、もし不意を突かれて頭上でもとられたら一撃だ。俺達の乗っている船は飛行船に吊られている形なので、真上だとバルバロッサさんの弓矢での迎撃も無理。


「リーズよ。飛行船の真上から攻められた時、どう対応するつもりだ?」

「……すまん、ちょっと考えさせてくれ」

「急いでくれ。まさかボラススも航空戦力を持っているとは思わなかったが、先ほどのドラゴンが哨戒だとしたら弱点はバレているやもしれぬ!」


 しかしどうするか……本来飛行船は空中戦を行える兵器ではないのだ。でかくて装甲ペラペラなのでどうにもならない。

 

 こうなるとS級ポーションの霧を周囲に撒くとかか……? もしくは少し危険な賭けになるがバルバロッサさんを飛ばすなりで……。


「とりあえず高度を上げる。それで極力真上をとられないようにして、その上でもしとられたら何とかする!」

「思いつかないなら、次にドラゴンが出てきたら飛行船は最悪破棄も考える。そのつもりで動くように!」


 こうして俺達はドラゴンを警戒しながら進んでいくのだった。




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飛行船の真上をとられたら流石のバルバロッサもどうにもなりませんね。

いや槍をプロペラ代わりにして飛びかねないかも……竜巻〇風脚で飛ぶ格闘家もいますからね。



それと実は二作ほど完結させたので、新作を投稿しはじめました。

『吸血鬼に転生しましたが、元人間なので固有の弱点消えました。贅沢したいので攻めてくる敵軍に無双しつつ領地経営します! ~にんにく? ガーリックステーキ美味しいですが何か?~』

https://kakuyomu.jp/works/16817330652228877397


無双経営話です、よろしければ見て頂けると嬉しいです!


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