第159話 乗員集め


「バルバロッサさん、特に信用できる人材を集めて欲しいです。更に条件としてボラススとの決戦が終わるまでは、この地下室から出ないというのもこみで」


 俺は白竜城の玉座の間でバルバロッサさんに相談していた。


 ちなみに元ビーガンの土地の貴族の蜂起も彼が一瞬で蹴散らしている。ボラススに寝返った敵に容赦などない。


「……最高でも五か月程度とはいえ、ずっと地下で暮らせと言うのであるか」


 バルバロッサさんは難色を示している。


 アーガとの決戦から一ヵ月が経ち、俺が地下施設で準備したいことは終わっていた。武器は兵器など多く造ったので、後は兵士たちに触ってもらい始めなければならない。


 ここで問題なのはきっと裏切り者が出ることだ。つまり俺の造った物が多少は外に出るのは考慮している。いくらあのクソ長い階段でしか出入りできなくても、きっと何らかの方法で盗まれるだろう。


 それはよい。例えばボラススやアーガが銃を盗み出したとしても、一丁や二丁程度ならば脅威にならない。短い期間で、ましてや技術力も不足している状況で量産は不可能だろうし。


「どうしても裏切りを出したくないところがあるのです。空飛ぶ船の乗組員だけは裏切られると替えがききません。情報漏洩も避けたい」


 銃の兵士ならば替えはきくし、多少の訓練で使えるようにもなるだろう。だが空飛ぶ船――飛行船――となれば話は別だ。


 操縦にはそれなりの訓練が必要だし、飛行船に詳しい者に裏切りが出ると面倒だ。普通の飛行船より操縦が簡単なように造ってはいるがそれでもだ。


 何も知らない奴が飛行船を見たとボラススに伝えるのはよい。あの国も眉唾と思うだろう、だが飛行船の仕組みなどを具体的に話されると信ぴょう性が増す。


 情報から弱点がバレたり対策を練られる可能性もあるので、飛行船の乗組員から裏切り者は出したくない。


「むぅ。しかし外に出れないのは可哀そうなのであるが」

「その分だけ給与も高くします。外に出してボラススに洗脳される危険を消したいのです。それに万が一に最初から裏切っていたとしても、見張りをつけておけば脱走される前に捕まえられます」

「リーズの言葉にも一理ある。バルバロッサ、人員を見繕ってやれ」


 アミルダが玉座に座りながら腕を組んでいる。


「わかりました。信用できて腕の立つ者を揃えましょうぞ」

「いえ、腕は立たなくてよいので頭がよい器用なタイプをお願いしたいです。飛行船の乗組員に腕っぷしはそこまで不要ですから」

「分かったのである。ところでリーズよ、目に隈ができておるが寝ているか?」

「大丈夫です。昨日も寝ました」


 バルバロッサさんの問いをごまかす。実はこの一ヵ月、あまり寝ていない。おそらく睡眠時間は毎日三時間以下だと思う。


 だがS級ポーションを飲みまくっているので問題はない。ここが無茶のしどころだしな。


「リーズよ、昨日はどれくらい寝た?」

「六時間くらいは寝てるよ」

「そうか……」


 アミルダが少し訝し気に俺を見てくる。心配させるのはよくないな、今度から目のクマをごまかすメイクでもしておこうか。


 今なら無理していた彼女の気持ちが分かる。俺もここが頑張りどころなのだ。


「じゃあ俺はこれで……」

「待て」


 玉座の間から抜け出そうとするとアミルダに呼び止められてしまった。話は終わったので早く地下室に戻って武器など量産したいのだが。


「なんだ? 俺は急いで……」

「リーズよ、明日もここに来い。お前に極めて重要な仕事がある」

「武器など量産する仕事があるんだけど」

「極めて重要な仕事と言ったはずだ。内容は明日話す、何を置いても来い」


 アミルダは俺を睨みつけて告げてくるので「わかった」と返事して、白竜城から出て前に止めていたバイクに乗って地下室へと戻っていく。


 このバイクも俺が魔法で製造したもの。馬よりも速く走れるので便利だ。


 そうしてしばらくバイクを走らせて帰って、地下室へと戻って作業を続けるのだった。





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 リーズが去った後の玉座の間では、アミルダとバルバロッサが真剣な面持ちで話をしていた。


「何が大丈夫だ。リーズは気づいてないのか、歩いてる時すらたまにふらついていたぞ」

「アミルダ様。リーズのことはお任せしてよいのでありますな? 吾輩より妻の方が」

「わかっている。私とエミリとセレナで何とかする」

 

 アミルダは天井を眺めて少し遠い目をする。


「何とかするとはどうやるのでありますか? 今のリーズは危ういですぞ、いっそ無理やり殴って眠らせた方が」

「その場しのぎで眠らせても無意味だ」

「なら二日おきで殴って眠らせるというのは。そうすれば睡眠も足りるのである!」

「……それはそれで別の意味でリーズの身体が壊れそうだからダメだ」


 バルバロッサの提案に対してアミルダは首を横に振った。


「夫の無理をとがめるのは妻の役目だ。私もたまには妻らしいことをしないと、愛想をつかされるかもしれないからな」

「うーむ……アミルダ様は信用できるのであるが、こと色恋沙汰関係になるとダメダメなのが心配なのでありますが」

「…………なら念のため聞いておく。お前が私ならどうやってリーズを止める?」


 明らかに不本意な表情だが問いを投げるアミルダ。彼女は何度も失敗してきて、結果的にバルバロッサが導いてきたのであまり強く言えなかった。


 そしてこの問いに対して、愛の伝道師キューピッドバルバロッサは少し考え込んだ後に。全てを解決してきた口から出た答えは!


「誘惑して一緒に寝れば……」

「お前もう出て行け帰れ」

 

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\愛の伝道師バルバロッサ/

弓で相手の心臓を砕くの得意そうです。

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