3

『同じだと思ったから』


『望まれた性別で、生まれる事が出来なかった、私と』



ー私は、息子が欲しかったのにー



「……、最後に、一つ聞きたい事がある」


ざあざあざあざあ


ざあざあざあざあ


「君は、一体、誰なの?」


もう一つの疑問。



ー彼女が誰なのか、

知ってる人は一人もいないのー



彼女が、私たちは同じだと、書いた理由。


初めて、彼女の声を聞いた時に感じた違和感は、きっとそれだったのだろう。


けれど、同じ高校の制服を着た彼女が誰なのか、クラスメイトの顔を思い浮かべてみても、どうしてもしっくりと来なかった。


あの声は、何処かで、聞いた事があるはずなのに。


『それは』


しばらく、静かな時間が流れた後で、彼女が、ゆっくりと口を開いた。



ざあざあざあざあ


ざあざあざあざあ


ざあざあざあざあ



「…ありがとう。確かに、俺達は似ているのかもしれないね」


そう言った私に、彼は、確かに笑って見せた。


良く知っている、あの、憂うような瞳で。


「…おやすみ」


背を向けて、寝入ってしまっただろう人物に、そっと、声をかける。


ざあざあ


ざあざあ


屋根を打つ、激しい雨音が響いていた。


きっと、夜の帳が上がる頃には、この雨も止んでいるのだろう。


そう思うと、やはり、少し、心が寂しくなった。

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