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「…うちの高校では、ある噂が流れてるんだ。午後四時過ぎに降る雨の時だけ、古民家が開いて、そこで、うちの制服を着てる女子が、売春をしてるって」


ずずっと、珈琲を一口啜る。


苦味の奥に隠された甘味が、ふわっと喉元を過ぎていった。


「それって、君の事なんだよね…?」


私が通う高校の制服を着た、名前も知らない彼女は、カウンターの向かい側に腰掛けながら、自嘲気味な笑みを浮かべた。


『売春してるって言われてるんだ。まぁ、そうだね、私の事で合ってると思うよ』


相変わらず、ノートに書き込まれた彼女の字体は、精緻で美しい。


『ここ、私一人で住んでいるんだけど、普段はひっそりと暮らしてるの。ただ、七つ下がりの雨の時だけは、下の入口のシャッター開けて、提灯に灯りをつける。別に、民宿でも、カフェな訳でもないんだけど、偶に、君みたいに雨宿りしようと軒下に来る人達が居るから。その中で、私が気になった人を、家に招き入れてる』

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