第5話 女は生きたまま生まれ変わる
「むっ無理ですよ先輩っ!」
「頼む!インターンシップに来た事にして局長の気を引いてくれ」
日村は後輩の松下に必死に頭を下げている。
電話やメールでは断られる可能性が有るので日村は当日に直接、松下を陸連へと要件を伝えずに呼び出した。
事情を話しインターンシップを装い、局長を局長室から応接室へ移動させて欲しいと先ほどから頼んでいるが会話は平行線だ。
「気を引くって言ったってどうやってやるんですか?」
「普通のインタビューで応接室に行けるならそれでいい。ただ、それが無理なら色仕掛けだ!」
「いいいいい色仕掛けってなんですかぁぁ」
松下は顔を覆って狼狽している。
「局長は色が好きだ、お前が誘えば二人きりになりたがるはずだ、その間におれは局長室を調査する。30分!いやっ20分稼いでくれれば良いから」
「むむむ無理ですよ、私上下ジャージですよ。色気とは無縁ですし」
松下は両手を広げて現状を日村に向けた。
確かに色気が無い。
ベリーショートの髪、日焼けした褐色の肌、178cm,女性にしては長身で砲丸投げで鍛えた肩幅。これはまるで、、、霊長目ヒト科、、ゴリ、、
「だだだ大丈夫だ、衣装は俺が用意した、化粧も俺に任せろ!人にしてやる」
「人?」
日村は不安を虚勢で払い、持参したスーツケースを開いた。
中からはスーツスカートにヒールの靴、ストッキングに化粧道具一式が出てくる。
松下はスーツケースの横に屈んで中を伺うと、先輩は変態さんなのですね。と、にやけた。
「必死なんだ。助けてくれないか」
真顔で松下の目を覗く。
「わ、私なんかで出来ますか」
照れて視線を外す松下。日村は顎を持って視線を戻す。
暫く松下の目を無言で見つめる。徐々に松下の瞳が熱を持って濡れる。
唇が意志を持ったように微動する。
「お前はできるよ。まずはこれを着てみよう」
頭をポンポンと撫でて立ち上がった。
その下で「ふぁ~い」と溶けたような松下の返事が聞こえた。
松下を更衣室で着替えさせると、なかなかどうして。
用意したスーツが少々小さく、それが逆に良かった。
松下の肉付きのいい体を小さなスーツに押し込めることで、より女性的な丸みを帯び、肉感が弾けんばかりに強調された。
目立った肩幅もスーツの上着に収まると鳴りを潜めシャツに無理やりに詰め込んだ胸がボタンとボタンの間を押し広げて渓谷を形成している。緊張したシャツが下着の柄に沿って形状を伝える。
松下の自前の下着が窺える。意外にも可愛いものを着用している。
足元に視線を下げると動く度にスカートのスリットからガーターストッキングのレースがちらちら光って覗く。スポーツで鍛えた筋肉質な足をブラックのストッキングが更に引き締めて見せ、色気から表出されたような光沢を追って足首に視線を移して行くとヒールへと続き、流線形が徐々に先細り円錐の先端へと集約される。
松下はスカートの裾を摘まんで下に引き下げながら内股でもじもじとしている。
「せ、先輩これで着方合ってますか?」
想像していなかった破壊力。こちらまで男性の本能を刺激される。
「松下、、、えちえちだ」
「せ、先輩の、、、変態」
頬を赤らめている。
次は化粧。
松下を椅子に座らせて化粧ポーチの中身をテーブルに広げる。
自然とスカート洞窟の奥、ピンクの宝物に目が行く。化粧道具に伸ばした手が洞窟に進みそうになる。
なんとか理性で手と視線を引き剥がすと鼻の穴を広げたまま作業を続ける。
褐色の肌色に合わせたベースメイクでキメを整え、デューラーで睫毛を立たせ、マスカラでボリュームを出す、目じりには濃いアイラインを引く。
シャネルのルージュ#119を塗って、軽くティッシュオフしてテカリを適度に抑える。エアオイルでスタイルを整えると完成したのは妖艶な雰囲気をまとったラテン系美人!
松下に手鏡を渡すと完成に歓声!
「先輩超変態!」と誉め言葉なのか分からないことを叫んだ。
伊達に自分の顔で練習していない。他人の顔に施すなど余裕!
日村は腰に手を当て、天を仰ぐ。
『俺は立派な変態だな』
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