ルート分岐 if・Hルート バレンタインデーのあと

※前置き。高校生時分のお話。

前回更新分『はじめてのバレンタイン』から分岐するifルート。いわゆるH(ハーレム)ルートです。なんでも許せる方向け。苦手な方は読み飛ばしちゃってください。



 灯花という、正式にお付き合いしている彼女がいるにも関わらず。むつ姉とイチャイチャしながらチョコレートクッキーを食べてしまった……

 直接触れはしないけど、口から口へ受け渡すギリギリのプレイで。(無論、おっぱいは当たっていた)

 しかも結局、全部食べた。


 唇にはクッキー以外の甘い感触が残っているような気がして、むつ姉が帰ったあともぼー……っと放心状態。


 ずるいよ。ずるい。なんだアレ。

 あんな渡し方されたら、忘れられるわけないじゃん。


「どうしよ……塾が終ったら、灯花が来るのに」


 てゆーか、既に外が薄暗いんですが。

 慌てて掃除機をかけようと、物置替わりにしている収納を開ける。

 すると、中から「わひゃあ!」と声がして、妖精さん――ならぬ、天使が転がりでてきた。


「いったたた……あ。ゆきくん……」


「え? あれ? 灯花?」


 なんでウチいるの。


 視線で通じたのか、灯花はなんとも気まずそうに目を逸らす。


「あ、あはは……あのね、せっかくのバレンタインだからサプライズしようと思って、合い鍵で入って、カーテンの裏に隠れてたの。それで、どさくさに紛れてここへ逃げ込んだんだけど……見つかっちゃったね」


「え。つまり……?」


「見ちゃった……★」


 ――終わった。


 いくらなんでもアレはやばい。それくらい俺にもわかる。

 いやでも、あの状態のむつ姉からクッキーを貰わない選択肢はないし、口で受け取っちゃったのは、ちょっとやりすぎ感があるけどだがしかし……!


 やべぇ。返す言葉が出てこない。


 だらだらと冷や汗が頬を伝うなか、灯花はぽそっと呟く。


「でもまぁ、六美さんならしょうがないよねぇ……?」


「え?」


「だって、幼馴染のお姉さんなんでしょう? ずっと前からゆきくんのことを好きな――しかも、ゆきくんだって六美さんのことが好き。もちろん一番は私だって信じているけど、もし私が六美さんと同じ立場なら、『ちょっとくらい許して?』って思っちゃうかも」


 もじもじと指を絡ませながら、甘えるように、誘うように、灯花が囁きかける。


「六美さんなら、アリなんじゃない?」


 な に が。


 と反論しつつも言葉にできない。


「最近、涼子ちゃんに聞いたんだ。六美さん、清矢さんと別れたらしいの。喧嘩とかじゃなくて、円満に。詳しい事情は知らないけど、やっぱり六美の中に、ゆきくんへの想いとか、清矢さんに対する申し訳なさとかがあったのかなぁ? でも、今はベストフレンドらしいよ。いわゆる、男女の親友ってやつ」


「そ、そうだったの……?」


 別れたのは、初耳だ……


「それでね、涼子ちゃん荒ぶってるの。『家(兄貴宅)に帰っても六美さんがいないんですけどぉ! どゆこと!? あたしのおっぱいは!?』って」


「あいつも大概失礼だな……」


「そこで! 私にいい考えがあるの!」


 にぱ! と愛らしく微笑んでみせるが、この話の流れで『いい考え』なわけがない。もう直感的にわかる。


「六美さんも……恋人にしちゃおうよ?」


「…………」


 それ。『彼女側』のセリフじゃなくね?

 悪魔の囁きだよ。


「ゆきくんさえいいなら、私はアリだと思うの。ほら、最近NTRとかも流行ってるし……?」


「NTRの意味、だいぶ違うと思うけど……?」


「私、ゆきくんが私以外の人にどんな表情を見せるのか、ちょっと気になるっていうか……どんなゆきくんでも愛したいっていうか……」


 んああ! いちいちもじもじする灯花が可愛い! 逆らえない!!


 要は、六美さんくらい愛に溢れた人なら、アリってことらしいんだけど……

 むつ姉的には、どうなんだろう?

 そんな、愛人みたいなポジション……


 しかし、そこで「灯花がいいなら、いいけど……」と言葉を濁したのがよくなかったらしい。


 バレンタインデー当日。夜。


 荻野伝手に連絡先を聞いたのか、灯花がむつ姉を招待しだした。

 急にお呼ばれしたむつ姉は疑問符を頭に浮かべるが、かくかくしかじかと灯花に耳打ちをされて、顔を真っ赤に染める。


「ウチで、チョコレートフォンデュしましょう! 六美さんも、一緒に!」


「え。うそ……ゆっきぃ。そんな……イイの?」


「 な に が? 」


 先程の、口移しでクッキーを食べたときの熱がまだ燻っているかのような、熱い瞳のむつ姉。てゆーか、チョコフォンデュって、そんな顔を赤くするようなものだったか?


「これからは、六美さんも一緒に、た~くさん。ゆきくんと三人で蕩けましょうね……♪」


 そうして、俺は。裸体の美女に囲まれて、指先やら身体のあちこちについたチョコレートをフォンデュでいただくこととなった。


「ふふっ。ゆっきぃ、くすぐったいよぉ……!」


「あ~ん、ゆきくん。今度はこっちです~! こっち舐めて♡」


 ……色々、思うところはあるけれど。


 罪悪感は、理性と共に吹き飛んだ。

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