〇〇編②

「こういう、だよ」


 唇をそっと離した、むつ姉のその言葉に。

 俺は、色々と吹き飛んでしまって。


 むつ姉の首筋に、噛みつく勢いで顔を埋める。


「俺も……」


「?」


「俺も、むつ姉のこと……ずっと好きだったよ」


 この恋心をぼんやりと自覚したのは、小学校低学年の頃だ。

 でも、むつ姉は優しくて親切な親戚のお姉ちゃん。そういう目で見てはいけない、考えてはいけないと、子ども心にその気持ちを封印したような気がする。これは、この感情すきは、『親愛』なんだって、言い訳で蓋をして。


 でも、今になって思えば、俺が黒髪美人が好きで、加賀美さんのことをすぐに好きになったは――

 心のどこかで、いつもむつ姉を探してたからかもしれない。


 むつ姉も、そうだったんだ……


 目が合って、瞬間。俺たちはキスを交わした。


 唇を合わせるたびに、むつ姉との思い出が頭にどんどんわきあがる。


 むつ姉が、いつもやたら距離が近かったり、抱きついてきたり、膝枕したがったり、「一緒にお風呂入ろう!」って言ってみたり。出会い頭にハグしたり、なでなでしてくれたり、ふーふーして、あーんして。あ~んなこととか、こ~んなこととか、全部ぜんぶ……


 ……俺のことが好きだったからなんだ……


 そう思うと、かぁっと頬が熱くなって、キスが勢いを増して。

 蘇る思い出の数々が、もう愛しくてどうしようもなくて……


(むつ姉……大好き。大好き。大好き。大好き……!)


「……好きだよ。むつ姉」


 言葉にすると、むつ姉は「ふふふっ!」と、世界で一番幸せな笑みを浮かべた。


「……嬉しい。ゆっきぃ……大好き!」


 それからしばらく、俺たちはむつ姉の部屋で睦みあっていた。

 キスをすると、むつ姉はふわふわと、蕩けたように力が抜けていって、俺に縋りつくようにして、首筋に腕をまわす。

 さっきからずっと、絶え間なくおっぱいが当たっていて、今触られたらヤバイなぁ……


 ――お見通しだった。


 むつ姉はそっと、俺の下半身に手を伸ばす。


「ふふっ。ゆっきぃも、男の子だね……?」


「!!」


 むつ姉はすっと立ち上がると、俺の手を引いて、ベッドに仰向けに寝転がった。


 ごろん。と、無防備に。

 両腕を広げて、視線で来るように促す。

 そうして、ほんのりと頬を染めて、懇願するように――


「……来て、ゆっきぃ。……大丈夫。今日……安全日だから」


「えっ……でも、いいの……?」


「いいよ」


 むつ姉はそう言って、俺をベッドに引き摺り込んだ。


「ゆっきぃ、愛してるよ」


 愛と欲、十年続く執心と、慈愛のすべてを込めて。

 むつ姉はそう囁いた。

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