蛇足

その後、楓さんが一緒に寝たいと申し出てきたので二人で同じベッドに入る。

勿論何もしてないしするつもりもない。

ただ単に一緒に眠るだけだ。


「ご主人様、ずっとお傍においてくださいね?」


「うん、約束するよ」


「私、今とても幸せです。大好きなご主人様に仕えれて本当に良かったです」


「楓さん、僕も君に出会えたことを心から感謝しているよ」


「ありがとうございます」


「こちらこそありがとう」


「ふふ、ではもう寝ましょうか」


「そうだね、明日も早いしそろそろ休まないとね」


「はい、おやすみなさいませ、ご主人様」


「おやすみ、楓さん」


そう言って目を閉じる。

しかし中々眠れなかった。

楓さんの温もりを感じるだけでドキドキしてしまうのだ。

中々眠れず悶々としていると、楓さんの方から声をかけてきた。


「ご主人様、起きていらっしゃいますか?」


「うん、まだ眠ってはいないよ」


「その……ご迷惑でなければ少しだけ抱きしめて貰ってもいいですか?その……ちょっと寂しくなってきました……」


楓さんは小声で恥ずかしそうに言ってくる。

僕は楓さんの背中に腕を回し優しく包み込むように抱き寄せた。


「ごめんね、楓さん。もっと早く気付いてあげられなくて」


「いえ、いいんです。ご主人様に迷惑をお掛けするわけにはいかないと思っていましたので」


「楓さんが求めてくれるならいつでも応えてあげるよ」



「ありがとうございます。でも大丈夫ですよ。私はこうやってご主人様を感じているだけでも十分に幸せなのですから」


「そっか、それじゃあもう少しこのままでいるね」


「はい、お願い致します」


僕は楓さんを抱き締めたまま眠りについた。


「おはようございます。愛おしいご主人様、起きてくださいな」


楓さんの声が聞こえる。


「ご主人様?」


「うーん、あと5分だけ……」


そう言いながら寝返りを打つ。


「仕方がないですね。」


楓さんが近づいてくる気配がしたと思ったら、僕に抱き着いてくる

楓さんの豊かな胸で顔を挟まれ一気に頭に血が回る。

慌てて、飛び起き挨拶する。


「おはよう!楓さん!」


「おはようございます。愛おしいご主人様、朝食をご用意しております。」


楓さんは満面の笑みでそう言った。


「ありがとう、すぐ着替えるから待っていてくれるかな?」


「ご主人様の寝間着姿はとても可愛らしいですね。お着換えもお手伝いいたしますよ。」


「えっ!?いや、流石にそれは自分で出来るよ」


「ふふっ、冗談です。」


「全く、心臓に悪いなぁ」


「申し訳ありません。ご主人様の反応があまりにも可愛いものでつい意地悪したくなってしまいます。お許しを愛おしいご主人様」


「勘弁して欲しいよ」


そんなやり取りをしながら身支度を整える。

楓さんは僕の髪の毛を整えながら話しかけてきた。


「ご主人様、今日はいかがいたしましょうか?」


「いつも通りで良いよ。特に予定はないけど、たまには外に出てみるのも良いかもね」


「そうですね、ではご準備が出来次第向かいましょうか」


「うん、わかった。ありがとう」


そして僕達は家を出て散歩を始める。


「今日は暖かいから気持ちが良いね」


「はい、風がとても心地よいです」


「そうだね。ところで楓さんは行きたい場所とかある?」


「そうですね。せっかくですから新しいお洋服を買いに行きませんか?」


「それはいい考えだね。早速行こうか」


僕達は服飾店へと向かう。

店内に入り、服を見ていく。


「楓さん、これなんかどう?」


「これは私には似合わないと思います。それに私よりご主人様の方がお綺麗なので私に合わせても意味が無いのではないでしょうか」


「いやいや、楓さんは美人だからどんな服を着ても似合うと思うよ」


実際楓さんはスタイル抜群だし、顔立ちも整っているので何を着ていても大抵は似合うと思うのだが、本人的にはあまり納得がいっていないようだ。

それから何件もの店を回ったが、結局気に入った物はなかったようだ。

楓さんに選んでもらった服を数着購入しただけだった。


「ご主人様、付き合って頂いてありがとうございます。しかしどれもこれもピンとこなくて……」


「気にしないでいいんだよ、僕も楽しかったしね」


「はい、また一緒に来てくださいね」


「うん、勿論だよ」


「ご主人様、お腹すきましたよね?どこかお食事にいきましょう」


時刻はまだ昼前だが、朝ご飯を食べてから結構時間が経っていた。


「そうだね、お昼食べようか」


「はい、ご案内しますね」


楓さんに連れられて来た場所は、落ち着いた雰囲気のお洒落なお店で、店内に入ると店員さんが声をかけてきた。


「いらっしゃいませ!2名様ですか?こちらへどうぞ」


席に着きメニューを見る。

楓さんはオムライスを頼み、僕はハンバーグランチを頼んだ。

料理が運ばれてくるまでの間、楓さんと会話をする。


「楓さん、ここってよく来るの?」


「いえ、初めてです。でも、ご主人様がお好きなものを食べたくて調べておきました」


「ありがとう、すごく嬉しいよ」


「ご主人様に喜んで貰えて良かったです」


「楓さんは本当に気が利くね。ありがとう」


「私はご主人様にお仕えするメイドでございますから当然の事ですよ」


「それでも僕は感謝しているよ」


「ご主人様がそう仰るならそれで構いません」


楓さんの表情を見てると、本当に嬉しそうにしているのがわかる。

この笑顔を見ると、僕まで幸せな気分になるのだ。

するとそこへ注文していた品が運ばれてきた。

楓さんは目を輝かせながら僕に話しかけてくる。


「ご主人様、美味しいですね」


「うん、凄いボリュームだったけど、とても満足感があるね」


「はい、大食いだと思われてしまうかもしれませんが、美味しいものは沢山食べられるのです」


「そういえば、楓さんは太らない体質なんだっけ?」


「はい、そのようでございます」


「羨ましいなぁ……」


「ふふっ、ご主人様はもう少し肉をつけても良いくらいですよ」


「そうかなぁ……」


「ええ、私が保証しますよ」


「ありがとう……んっ!?」


楓さんが僕の頬にキスをした。


「ご馳走様でした。」


「えっ!?あー、ごちそうさまでした。いきなりびっくりしたよ」


「申し訳ありません。つい、したくなってしまって」


「いや、別に嫌なわけじゃないんだけどさ、一応人前あまり目立つ行動はやめて欲しいなと思って……」


「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」


「そんなに落ち込まないでよ。その僕も嫌じゃなかったから…」


「はいっ!」


楓さんはとても幸せそうな顔をしている。

やっぱり楓さんには笑っていてほしいと改めて思った。

昼食を済ませた後、僕達は帰宅することにした。

帰り道の途中にある公園で休憩する事にした。

ベンチに座って一息つく。


「少し疲れたけど、充実した休日になったね」


「そうですね。また機会があればお出かけしましょうね」


「そうだね、今度はどこに行こうか?」


「そうですね、では海なんてどうでしょう?」


「いいね、今度行こうか」


「楽しみです」


それから僕達は手を繋いで家へと帰ったのであった。

僕は現在楓さんと一緒にベッドの上で横になっている。

楓さんに抱きしめられながら頭を撫でられている。

「ご主人様、お慕い申しております」


「僕も好きだよ、楓さん」


「これからもずっと一緒ですよ」


「うん、約束するよ」


「もうしばらくこうしていてくださいね」


「わかったよ」


楓さんに優しい声で囁かられながら眠ってしまった。

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クールなメイドさんとの甘い一日 ヴぃーたー @bvnj789

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