第2話 B地区へ

”通称”A地区からB地区に入る方法は1つしかない。最寄りのB地区に隣接している役所の中で受付をして、そのまま役所内の通路を使ってB地区に入るのだ。その日、僕は受付にいた。周りに人はいない。それもそうだ。A地区からB地区に行く人など滅多にいないのだ。


A地区からB地区に引っ越すのは簡単だ。全ての財産、持ち物をA地区の自宅に置いてくるだけ。B地区には何も持ち込めない。ただ、またA地区に戻りたくなった時の為に、持ち物や財産は全て国が管理してくれるのだ。


僕は書類1枚を持ち役所の受付に並ぶ。身分証明をしたら通路を通ってB地区に行く準備となる。B地区では国が用意した服を着なければならない。全て平等なのだ。


通路の途中にある部屋で全ての服を脱がされ何も隠し持ってないかを検査され、B地区の服に着替えた。サイズはピッタリだが無地で簡素な服だった。替えの服は既にB地区の家に用意されている。


役所の担当者とB地区へ向かう通路をひたすら歩いた。彼女は事務的な話しかしなかった。いよいよB地区側の受付に到着し、担当が交代した。彼は丁寧に僕の家まで案内をしてくれた。


必要な物はチケットで手に入れてください。こちらのカードで支払いができます。もし困ったことがあれば役所まで来てください。彼はそう言って役所へ戻って行った。B地区での僕の生活が始まったのだ。

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