第2話 コウスケ、実は腹黒いんです

 自動笑顔:コウスケのユニークスキルです。


 保育園に通っていたころ、輪玉さんというおばさんが家に定期的に来るようになりました。いわゆるエホバの証人の家庭聖書研究というものに母親が応じ、聖書の勉強を始めたのです。輪玉さんの喋り方、いつも唾が口に溜まっているような口調だなぁ、と思っていました。


 当時の、僕の家族構成。母方の祖父、祖母。父、母、僕、弟2人の7人家族。父親は婿養子でした。THE 昭和って感じの家族だったような。あんまり記憶に無いかも。


 そのうち、王国会館という場所で行われる集会なるものに連れて行かれるようになりました。当時は、週に3回、信者同士で集まって、聖書の勉強をします。兄弟姉妹と呼び合う信者さんに仲良くしてもらうようになりました。

 

 そんな時に勃発したのは、宗教活動に対する父親の反対。今から思うと、父親の行動はまっとうだよな、と感じます。妻と子供3人が、1週間のうち、夜に2回と日曜日に出かけて家に居ない。異常ですよね。

 父親は、気が弱いが酒にも弱い。酒を飲んでは暴れる人でした。母親も酒には弱い。コウスケ、酒に強い。隔世遺伝かな、と思っているだけれども、これは別のお話。

 父親が飲んで暴れるので余計にこそこそ行動する妻と子供。自宅は義理の父と母も居る。可哀そうな人ですよ。でも、当時は父が怖かった。母親についていくしか道はなかった。集会に行ったら、よく来たねって誉められる。何度か、集会場所に父親が乗り込んできたこともある。子供だけ強制的に連れて帰られたときに一回殴られた。車の中で鼻血出た。父親焦ってたなぁ。いま思うと、ほんと父、可哀そう。


 こんな生活をしていると、子供らしさは消えるのかな。長女だった母親と長男の僕は、性格も似ていたこともあり、親子というより相談相手のような存在になる。といっても、やはり子供。子供ながらに何か考えていたのかなぁ。


 そんな幼少期を過ごしてきたので、たぶん自分を守るために身につけたスキルが、自動笑顔。今でも、人当たりのいい人として周囲の人には認知されていると思う。あまり人見知りをしないので、すぐに会話は出来る方。そして世話をするのも嫌いじゃない。親切な人として思われている。でも、その人に興味あるわけじゃない。自然の情愛というものがおそらく欠落しているので、その人からスッと手を引くらしい。急に興味が無くなったみたいに見えるらしい。本人はあまり意識していないのだけれども。


 誠実に対応している僕と、急に冷めて何もする気がなくなる僕と、突然損得勘定を考えてしまう僕と。多重人格的な思いが詰まったコウスケです。しょっぱな誠実だけど、腹黒いんです。実は。


 そんなお話。




 

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