第5話

 その後、家主の娘は下宿先に戻り、次に実家に帰って雨が降るまでにはおおよそ2年もの年月が経過していた。


(今日こそは……!)


 家主の娘は事前に“なめくじの飼い方“を調べ、今日までに飼育材料を全て揃えていた。捕まえる気満々である。


 うろうろと忙しなく歩いていると、台所のシンクになめくじが張り付いていることに気づいた。


 ばっ


 家主の娘は割り箸とサラダカップを掴むと、なめくじを割り箸で掴んだ。

 サラダカップの中には、あらかじめ水で湿らせたティッシュを敷き、葉っぱを二枚置いてある。


 なめくじをサラダカップの中に移すと、そっとラップを被せて密閉状態にした。なめくじくんを逃がさないためである。


「やった、つかまえた……!」


☆★☆


 その日から、家主の娘はなめくじくんにドックフードを与えて飼育した。

 なめくじくんは不思議そうに家主の娘を見ている。


「そろそろお母さんに話してみようかな。ね、“ちび”」


 しーん……


「あれ? “ちび”、私だよ。“ちび”、“ちび”……」


 なめくじは微動だにしなかった。


「なんで、“ちび”じゃなかったの……?」


 家主の娘は目に涙を浮かべ、顔を伏せた。

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