第3話「もしかして君は……?」



「レンタル彼女を頼んだら、待ち合わせ場所に義妹が来たんだが!?」

っ最中。


カラオケルームに入ってからずっと俺が一人で歌ってます。


葵ちゃんは歌うどころか一言も話さない。


何曲か歌ったあと、リクエスト曲が途切れた。


この機会に葵ちゃんにどうして一言も話さないのか理由を聞いてみよう。


もしかしたら葵ちゃんは具合が悪いのかもしれない。


「会ってから一言も話さないけど何か理由があるの?

 もしかして葵ちゃん、口内炎ができてるとか?」


葵ちゃんは一言も話さない。


物凄く口下手なのかな?


そのとき俺はあることに気づいた。


もしかして会話オプションは別料金なのか??


外国のホテルやレストランに行ったらウェイターにチップを払うのが常識みたいに、レンタル彼女にもチップを払う習慣があるのか??


もしかしてカラオケで歌うのも別料金?! 一曲歌うのに千円かかるとか?? 


レンタル彼女を利用したのが初めてだから知らなかった!


だから彼女はずっと不機嫌だったんだな! ようやく理解できた!


「すみません、会話するのにもカラオケで歌うのにも別途料金がかかるんですね。

 俺、レンタル彼女を利用したの初めてだから知りませんでした」


葵ちゃんは俺の話を聞いてキョトンとした顔をしていた。


そのあと葵ちゃんは顔をぷくっと膨らませ、上目遣いで睨んできた。


美少女の上目遣いやばい! 顔をぷくっと膨らませる仕草もチャーミングだ!


「………か」


葵ちゃんが初めて喋った。でも声が小さくてよく聞こえない。


「えっ?」


「翔兄の馬鹿!」


「ええっ?」


翔兄……俺をこう呼ぶのは一人しかいない。


「もしかして……陽葵ひまりか?」


陽葵ひまりの一字をとって源氏名が葵……そういうことか。


「そうだよ! 陽葵ひまりだよ! どうして気づいてくれなかったの!」


陽葵ひまりは七年前まで俺の義妹だった。


俺が十一歳のとき俺の母親と陽葵ひまりの父親が再婚。


そして俺が十三歳のときに二人は離婚した。


それ以来陽葵ひまりとは会っていない。


つまり陽葵ひまりとは七年ぶりに再会した。


うわー……誕生日にレンタル彼女を利用して義妹をレンタルしてしまった。


きっと明日には誕生日にレンタル彼女を利用したことが陽葵ひまりの家族に知られてしまう。


陽葵ひまりの父親を通じて俺の母親や親族にそのことが話されたら……!


恥ずかしい、恥ずかしすぎる! 恥ずかしくて死ねる!


「翔兄どうしたの?」


俯いたまま無言でスマホを操作していたら、陽葵ひまりが心配そうに声をかけてきた。


「いや……どうやって自殺しようか検索を……」


「馬鹿なの! どうして翔兄が自殺しなくちゃいけないのよ!」


「だって誕生日にレンタル彼女を利用して義妹とデートしてたなんて恥ずかしすぎるだろ!

 このことを親族に知られたら死ぬまで馬鹿にされる!

 もうお正月とお盆におじいちゃんとおばあちゃんの家に行けない!」


さよならおじいちゃん、おばあちゃん。おじいちゃんが家庭菜園した野菜が好きだったよ。おばあちゃんの作ってくれたおはぎも美味しかったよ。



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