第4話「誕生日プレゼントは義妹の初めての〇〇?!」最終話




「もう、翔兄は考え過ぎだよ!」


「つうか陽葵ひまりはなんでレンタル彼女なんかで働いているんだ!

 待ち合わせ場所にどんな男が来るか分からないんだぞ!」


確かレンタル彼女は手を繋ぐとか腕を組むぐらいの接触はOKだったはず。


俺はひよって手も握れなかったけど。


「強引に個室に連れ込まれて無理やりキスとか、い……いかがわしいことされたらどうするんだ!

 危険だ! 今すぐこんな仕事辞めなさい!」


他人が働いているのは構わないが、妹は別だ。


「翔兄、説教くさ〜〜い。パパみたい」


まさかこの年で一つ下の陽葵ひまりにおじさん扱いされるとは思わなかった。


「お兄ちゃん、大好き」と言って俺の後ろをついてまわっていた純真で無垢な陽葵ひまりはいなくなってしまったのか?


俺ちょっと泣きそうなんだけど。


「もしかして陽葵ひまりはレンタル彼女の仕事以外にも……援助交際とか、パパ活とか、金持ちの愛人との密会とか……」


ピュアだった陽葵ひまりのイメージががらがらと音を立てて崩れていく。


「もう違うよ。

 私そんなことしてないもん。

 翔兄が登録したレンタル彼女の名前覚えてる?」


「確かレンタル彼女、スプリング」


「私とパパの名字は?」


「確か春野」


一時期は俺も名乗っていた名字だ。当然覚えている。


「またわからないの、春は英語で?」


「スプリング……えっ? もしかしてレンタル彼女スプリングって……?!」


「パパが経営している会社よ」


「お義父さんは何を考えてるんだ!

 成人したばかりの娘をレンタル彼女で働かせるなんて!」


「もう、違うよ翔兄。

 私がパパにお願いしたの。

 もし翔兄が登録することがあったら、私のプロフィール以外検索結果に表示されないようにしてって。

 翔兄に私以外の人は絶対に紹介しないでって」


「はっ? ちょっと話についていけないんだけど」


検索したとき葵ちゃん(陽葵ひまり)しか表示されなかったのって、陽葵ひまりに仕組まれたことだったのか??


「でも、翔兄ってば私の顔を見ても全然気づかないんだもん。

 ムカついた」


「もしかして俺が待ち合わせ場所で自己紹介したとき陽葵ひまりが怒ってたのって……?」


「翔兄に『はじめまして』って言われたときショックだったんだよ。

 可愛い妹の顔を覚えてないなんて酷い」


「ごめん」


まさかレンタル彼女を利用して、義理の妹が来るとは思わないだろう。


「翔兄が私からのプレゼントを受け取ってくれたら許してあげる」


「プレゼント?」


「翔兄、今日はお誕生日だよね。

 プレゼントに私の初めてを上げる」


「ええっ……!?」


陽葵ひまりが瞳をとじて顔を近づけてくる。


顔ちっちゃいな。まつ毛長いな。お肌ピチピチだな。唇にリップを塗っているのかな? 唇が艶艶してるな。


初めてってキスのことかな?


それとももっと他の……?


心臓がバクバクと音を立てている。


陽葵ひまりの唇と俺の唇の距離はあと数センチ。


この俺が何もしなければ陽葵ひまりと……キス。


いやいやそれはだめだろ義兄として!


陽葵ひまり! お遊びでこんなことをしてはいけません!」


悪ふざけにもほどがあるだろ!


このあと俺は陽葵ひまりをソファーの上に正座させ、二時間みっちり説教した。


二時間後陽葵ひまりに、

「翔兄説教長いよ〜〜。

 おじいちゃんみたい」

と言われ地味にメンタルにダメージを受けたのはまた別の話だ。


























俺が誕生日前日に彼女に振られたのも、

友達に連絡したとき全員に「明日は予定がある」と言われ断られたのも、

友人に「レンタル彼女でも利用したら」と言われ「レンタル彼女・スプリング」を勧められたのも、

それらの全てを義妹が裏で糸を引いていたことだと知るのも……また別の話だ。





――終わり――







最後まで読んで下さりありがとうございます。




【後書き】

※最初はレンタル彼女を利用したら同居中の義理の妹(地味)が、メイクして髪型と服装を変えて美人になって現れた。 


だけどアホな義兄はその正体に気づかない……という話を書く予定でした。


「同じ家に住んでる義妹が、髪型とメイクを変えた位で気づかないものかな??」という疑問にぶつかり、「何年も会っていない義妹」という設定に変えました。


両親が離婚しているから法律上は義妹ではないんですが、主人公の感覚としては妹のままということで。




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「レンタル彼女を頼んだら、待ち合わせ場所に義妹が来たんだが!?」完結 まほりろ @tukumosawa

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