地下から
仙台空港跡地を眺める。
ここら辺一帯は森に囲まれている土地だったのだが、跡地だけは森に侵食されず綺麗に残っていた。ボロボロの状態ではあるが。
滑走路はボコボコになっており飛行機を飛ばすのは無理だろう。
管制塔らしき塔も真ん中あたりからポッキリと折れていた。
「企業紛争で仙台空港は猛爆撃を受けたらしいな、仙台市の歴史資料館にそういう記述がある本を見つけた」
「格納庫が無事だと良いんだけど……」
「ぶいーん。何か残ってますよ、きっと。見渡す限り、どこに格納庫があるかわからないくらい建物のザンガイが広がっていますけども」
「普通なら滑走路の横に格納庫があるだろう、多分。まあ、そこは一時保管する場所だとは思うが」
滑走路の横についてる格納庫は飛ぶためのメンテナンスや事前作業を行っている場所だ、恒久的に保存する場所ではない。
空爆を受ける前兆さえわかればそこに航空機をとどめておくことはしないだろう。
ただ、何らかの情報が手に入るかもしれない。調べておくに越したことはないだろうな。
また、折れている管制塔も重要な情報採掘ポイントだ。管制塔には空港の全てが詰まっている。航空機の避難場所が見つかるかもしれない。当時は紛争中だ、頑丈な保管庫があってもおかしくはない。調べられるなら調べよう。
大商業施設である空港ターミナルには何か面白いものが残っているかもしれない。五〇年前に崩壊してそのまま雨ざらしだ、可能性は薄いけどな。
「さて、どんな建物だったかを調べながら残骸を漁っていくとするか」
残骸を漁るといっても、仙台空港跡地はかなり広大な敷地だ。建物も一つ一つが巨大で、隅から地道に漁っていたら百万年かかる。当たりをつけないとな。
「滑走路と管制塔から始めましょう。航空機の情報があるならそこの周辺にあるはずよ」
よっしゃー! と駆けだしていくアルス。本当に元気がよい。
「なにつっ立ってんのよ。置いてくわよ」
僕を小突いて後に続く希さん。ここ最近の騒動で僕に対する態度も変わったし肝っ玉がデカくなった。彼女なら女性にモテてもおかしくはない。――ノーラは元気だろうか。まあ今気にする場面ではないな。
そして僕は――
広大な敷地の中から格納庫を見つけた。中身は全滅だったが。
「セキュリティも壊れていたし、これだと地上に航空機があるとは思えない。地下かしら」
「アルスが活躍していたころは地下設備が一杯ありましたよー」
「おまえ、活躍していた時代あるのか?」
「生まれてこのかた地下にいました!!」
まあでも紛争当時に生きていたアルスがそう言うのだから地下施設があるのだろう。軍の駐屯地も地下設備が数多くあったからな。
管制塔の周辺を調べる。地下室を作るなら重要設備の下が相場だ。施設全体の管理センターは他のところにあるかもしれないが、この管制塔の大きさなら管制塔が管理センターも兼ねているかもという希さんの判断もあってだ。
「じゃあゴミ掃除していくか。重たい瓦礫は僕が持つから二人は細々したものを拾っていってくれ。今まで通りガトリング砲で一掃したら資料も何も吹っ飛んでしまうからな」
そうして一つ一つ丁寧に瓦礫を排除していく。一応外見は保っているわけだから無事な内部も存在するはずだ。
居住性が抜群に良いイーグルⅫで寝泊まりしつつ瓦礫を排除すること数日、ついに無事な部屋を見つけた。
「ここは……?」
「アルスが思うにメインサーバー室っすね。デカい施設には自分用のデータサーバーがあるもんです」
と、アルスが説明する。今の時代だと各首都にメインサーバーがあって厳重に守られているが、紛争時代だと分散していたのだろう。
「サーバー室ならまだ生き残ってるデータがあるかもしれないわ。ここは頑丈に作られているみたいであまり破損してないものね」
「いきなり電源ぶっこ抜かれたらサーバーもしんじゃいそうです!」
「とりあえず入ってみる。なにかの権限もしまってありそうだ」
接続プラグを遠隔ハックし内部へ侵入する。
データサーバーの中は特に防壁が張られているようではなく、静かなものだった。データを漁っていく。
「管制資料、航空機のデータ、今日の弁当メニュー一覧。あまり面白いものはないな。もっと内部へ侵入するか」
奥へ奥へとデータの海を泳いでいく。最深部には管制塔のコントロール権が鎮座していた。壊れていたが。
「せっかくのサーバーだが当たりなしか。――っと、こんなところにもコントロール権がある。こっちは生きてるな。これは……地下格納庫への入り口を管理している!!」
早速動かす。
と、当時にサーバーに防壁プログラムや攻勢ウィルスが出現する。管理者じゃないと逃げるのは不可能だな。だたし、今回は”僕”が侵入しているんだけどな。
暴走するサーバーからするりと抜け出すと希さんが話しかけてくる。
「やったわね! 外に出て観察してみたけど、凄いわよ、地面が動いてる!」
「地面が動く? 見物だな」
サーバー室から抜け出ると、今までとは違った光景が目の前に現れた。
滑走路が数メートル地面の下からまるごと動いたのだ。まさに地面が動いた。そして見えた地下から大量の航空機がこの目に映っている。
「これは、モスポールされている?」
「いますねー、アルスはそういうのわかっちゃうんです」
「なら、軌道航空機はありそうかしら?」
「わかんないですねー、アルスにそこまでのきのうはないんです」
「ダメダメじゃないの」
「胸にしか栄養がいってない馬鹿にいわれたくないです」
「んだとごるぁ!!」
そっか。
しかし数え切れない数、把握できない種類の航空機が目の前にあるんだ。軌道航空機の一つや二つ、ないことはないだろう。
航空機にパイロット、整備士。全部が揃う。
もうすこし、もうすこしだ
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